特集

2020年7月26日放送「バイカル湖」

世界一透明な湖が全面凍結で見せる氷の絶景

世界で最も古く、最も深く、最も透明な湖、バイカル湖。冬、その湖はシベリアの極寒の冷気によって全面凍結します。その凍りついたバイカル湖を取材してきた石渡ディレクターにお話を伺いました。

凍結した湖面が生み出すさまざまな氷の景観

冬のバイカル湖は、そのすべてが凍りつきます。その湖面に広がる不思議で美しい、氷の世界をたっぷりお見せします。

──バイカル湖はどんな世界遺産ですか?

石渡ディレクター(以下、石渡):ロシア東部シベリアの南方にある、約3000万年前に地殻変動によって生まれた世界最古の湖です。また断層の亀裂にあるため世界一深く、さらに世界一透明度が高い湖でもあります。番組として4回目、私自身も2度目の取材となります。

──今回はどんなバイカル湖を見ることができるのでしょうか?

石渡:冬のバイカル湖の全面凍結です。バイカル湖の面積は琵琶湖の47倍もありますが、その湖面すべてが2月ごろから3ヶ月間、凍りつくのです。氷点下45度にもなるシベリアだから生み出される絶景と言えます。

冬のバイカル湖は、見渡す限り一面氷の景色になります。

──そんな大きな湖がすべて凍ってしまうなんて驚きです。どれぐらいの厚さの氷が張るのでしょうか?

石渡:厚さはその年の気候や場所にもよりますが、およそ1m、分厚いところでは1.5mにもなるということです。

──広大な氷の湖面をどのようにして移動するのでしょうか?

石渡:今回の取材ではホバークラフトで移動しました。以前の取材では、自動車だったのでデコボコとした氷の上は走りにくかったのですが、ホバークラフトはどんな場所でもスムーズに移動できました。

ホバークラフトで氷の上を走り回って撮影は行われました。

──全面凍結の湖の見所を教えてください。

石渡:まず、なんと言っても美しい透明な氷を見ていただきたいです。例年は凍った湖面に積もった雪を強い風が吹き飛ばし、氷が剥き出しになります。ところが今年は雪が多かったため、氷が剥き出しになった場所がなかなか見つけられませんでした。でも、ホバークラフトであちこちを探し回ったかいあって、見事な氷の映像を撮ることができました。

──実際の湖面の氷はどんな様子なのでしょうか?

石渡:分厚い氷に大きなひびが入るのですが、それによって厚さが実感できます。バイカル湖は最も深いところで水深1600m以上あるのです。現地で透明な氷の上に立って、この足の下に何百mも深さがあると考えると少し恐ろしく感じました。あと、氷の中に閉じ込められた空気の丸いかたまりや、渦を巻くような模様にひび割れた氷など、さまざまなここでしか見られない不思議な映像を撮ってきました。

澄んだ氷の上に立つと、水の深みが暗くなっている様子が見えて、少し怖さを感じることがあるとのこと。

氷に閉じ込められた空気のかたまり。自然が生んだ不思議なオブジェです。

──単なる透明な氷だけでなく、いろいろな形や表情があるのですね。

石渡:ほかにも湖面の氷がせり上がった亀裂が見られました。これは日本では「御神渡り(おみわたり)」と呼ばれている現象で、気温の変化で氷が膨張と収縮を繰り返すと、このような亀裂ができます。何キロにもわたって氷の亀裂が盛り上がって白い筋になっている様子をドローンによる空撮で捉えてきました。また湖の上では、この亀裂でメキメキと音を立てながら氷にひびが入っていく様子もカメラに収めてきましたのでご覧ください。

氷の収縮と膨張によってできる亀裂。湖面の上に白い筋になって現れます。

──氷の世界というと静かなイメージがあるので、音が聞こえてくるのは面白いですね。

石渡:取材中にドーンという音も聞こえてきました。おそらく大きな氷が割れた音だと思います。バイカル湖のダイナミックさが感じられましたね。

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