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2019年12月15日「百舌鳥・古市古墳群」

杏さん スペシャルインタビュー“ナレーター杏、古墳の魅力に迫る!

2019年7月、「百舌鳥・古市古墳群」が世界遺産に登録されました。今回の番組は特別企画。普段はナレーションを担当している、ファッションモデルで女優の杏さんが現地へおもむき、取材に初挑戦しました。取材を終えた杏さんに、実際に古墳に迫った感想をうかがいました。

古墳は「未来へのタイムカプセル」

──杏さんがこの番組のナレーションを担当し始めてから、2年ほど経ちました。いつもはスタジオで音声を収録するだけだったのが、今回の「百舌鳥・古市古墳群」は、初めて現地で取材されました。杏さんは歴史が好きということで知られていますが、古墳時代にはどんなイメージを持っていましたか?

杏さん:古墳時代というのはなかなか謎も多くて、あまり事前の知識はありませんでした。ただ一方で、現在の国とか、私たちの生活につながる空間がそこにあるようなイメージを持っていました。外国との貿易も相まって、想像よりずっと国際的だったんじゃないかとか、国家の体系が形作られてきた、日本国内でも、大きな力がひとつの形を成してきたような時代なのかなと思っています。

──具体的には、百舌鳥・古市古墳群のどこを取材されましたか?

杏さん:まずヘリコプターで空から古墳群を見させてもらって、次に実際の「峯ヶ塚古墳」に入り、さらに「近つ(ちかつ)飛鳥博物館」で埴輪などの展示を見てから、最後に、ここは世界遺産とは違う場所なのですが「五色塚古墳」を取材しました。スケジュールの都合でもあったんですけれど、振り返ってみて、まず俯瞰で古墳のスケールを感じてから、実際の古墳に登って、その後に博物館で知識を得て、おしまいに、作られた当時はどんな姿だったのか見ることができたのは、すごく良い順番でした。

──それでは順にうかがっていきたいと思います。まず空から見た古墳群はいかがでしたでしょうか?

杏さん:移動手段でのヘリコプターという経験はあったんですが、ヘリからの撮影というのは初めての体験でした。上空1000メートル以上、鉄道が線にしか見えないほどの高さまで上がって、そこでやっと古墳群の全貌が見えました。本当に機械もない時代に、これだけ大きなものを作ったのかというのを、目で見て確認することができました。

ヘリから見た「百舌鳥・古市古墳群」。その規模の大きさに、いったいどのようにして作られたのかと驚かされます

──次に行った峯ヶ塚古墳ですが、通常は入れない場所を取材できたということですか?

杏さん:はい。案内をしていただいた、考古学者の和田晴吾先生も峯ヶ塚古墳に登ったのは数十年ぶりとおっしゃっていました。過去何度か発掘調査が行われているようですが、かなり木が生い茂り森のようになっていて、自然の力強さを感じました。調査されていると言っても、この古墳はまだ発掘されていないところもあるそうです。他の古墳もまだわからないことだらけで、古墳自体が「未来へのタイムカプセル」になっていると思うと、この先に楽しみがあると感じました。

「峯ヶ塚古墳」では、特別に立ち入りを許可されて古墳の墳丘に登ることができました

──謎が多い古墳が「未来へのタイムカプセル」とは興味深いですね。近つ飛鳥博物館では発掘されたものが展示されていたということですが、どのような発掘物がありましたか?

杏さん:武人像や馬、水鳥の埴輪だったり、柵のように古墳に何万個も並べたという円筒埴輪とか、石棺などがたくさん展示されていました。

──その中で、杏さんが気になった埴輪はありましたか?

杏さん:水鳥の埴輪は、足の水かきの部分まで再現されていて、遠目に見たら本物なのかと思ってしまうぐらいの精巧さでした。また円筒埴輪は、人が入れそうなほどの大きさのものがあり、焼き物の技術がすごいと思いました。私も、かじった程度なのですが陶芸を習った経験があって、あそこまで大きいものを、形をそろえて大量に作るにはとても高度な技術が確立されていたのだなと感じました。

さまざまな埴輪が展示されている「近つ飛鳥博物館」。水鳥の埴輪のディテールや、円筒埴輪の大きさに注目です

──最後に取材した五色塚古墳は、埴輪を含めて古墳時代の姿が復元されたものですね。当時の姿をご覧になって、いかがでしたか?

杏さん:森のような状態だった峯ヶ塚古墳に比べて、復元された五色塚古墳は、本当にこんな姿をしていたんだという驚きがある場所でした。以前、アンコールワットに訪れたときも感じたのですが、人々に忘れ去られるぐらいの期間、放置されていて、それが忘却の彼方に行った瞬間っていつなんだろうと。古墳もいつからこんなに草が生え、木が生い茂ってしまったのだろうと思ったりしました。先生から、意外にも割と早い段階で森になっていたのではないかというお話を聞きました。あの(五色塚古墳のような)綺麗な状態は、できあがったその瞬間だけで、そこから先は誰も触らない、入らないというのを聞いて驚きました。せっかく作ったなら死後も多くの人が訪れるようにしたらいいのにと私は思っちゃうんですが、それは生者からの視点でしかなくて、死者のために作って、あとはそのままにするというお話が、今回の取材の中ですごく興味深かったです。

完成当時の様子を復元した「五色塚古墳」。峯ヶ塚古墳のように木々が生い茂った古墳からは想像つかないような姿です

「これからの世界遺産も楽しみです」と今後の意気込みも語ってくれた杏さん

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