特集
2019年10月27日「イスチグアラスト・タランパジャ自然公園群」
赤い大地の高さ100mの断崖と虹色に染められた峡谷
この世界遺産の見どころは恐竜の化石と奇岩だけではありません。長い年月を経て自然が生み出した絶景の数々と、現在の生態系にもつながる生物の痕跡もご紹介していきます。
──さきほど、衛星から見て「白い土地」から化石が見つかったお話がありましたが、もう1つの「赤い土地」はどんな場所なのでしょうか?
小澤:赤い土地は白い地層よりも上にある新しい地層です。砂岩で、砂に含まれる鉄分が酸化して赤くなっています。ここでは赤い断崖が延々と続いています。100メートルもある崖の表面が、風で巻き上げられた砂によって長年削られた結果、まるでカーテンのように滑らかに波打つ壁になっているのです。
機械で研磨したかのように滑らかな赤い断崖。風に巻き上げられた砂によって自然に出来上がったものです。
──途方もない長い年月をかけて自然が生み出した絶景ですね。
小澤:自然が生み出した絶景では「虹の渓谷」と呼ばれる丘も素晴らしい眺めでした。ここでは、普通は横に重なっている地層が地殻変動のため、折れ曲がって縦になってむき出しになっているのです。そのため、丘にはカラフルで美しい縞模様が表れています。その不思議な光景を、ドローンを駆使して空から撮影しました。ドローン映像といえば、イスチグアラストに「カンチャ・デ・ボチャス(ボッチャの競技場)」という場所があるのですが、それもドローンの低空飛行で撮ったので必見です。そこには、直径30センチほどの球体の岩が多数、地面に転がっているのです。この丸い岩は、生物の死骸などを核としてカルシウムなどの成分が固まったものと言われているのですが、詳しいことはまだわかっていません。
地層がタテになって丘に現れているカラフルな「虹の渓谷」の美しい景色。
直径30センチほどの球体の岩が多数、地面に転がっている「カンチャ・デ・ボチャス」(イスチグアラスト州立公園)。
──本当に奇妙な岩や景色が数多くある世界遺産なのですね。そのほかに見どころはありますか?
小澤:ちょっと変わったところでは、動物のフンの化石を取り上げています。タランパジャ国立公園で発見されたのですが、フンのかたちがそのまま固まった化石なのです。フンといっても古生物学としては重要で、フンからわかることがいろいろあります。このフンの主は、イスチグアラスティアという、体長3メートルで2億2800万年前の哺乳類の祖先だそうです。化石も発掘されていて、肉食ではなく植物を食べていたことなどが判明しています。
動物の糞の化石。このフンの主は、イスチグアラスティアという哺乳類の祖先とのこと。
──イスチグアラスト・タランパジャ自然公園群は見どころが盛りだくさんで放送が楽しみです。最後に、視聴者の皆さんへひと言お願いいたします。
小澤:今回はマルティネス博士の協力のもと、通常では立ち入れないエリアでの撮影やドローンを使っての空撮が実現できました。迫力のある絶景映像で、生命のダイナミックな歴史が刻まれた世界遺産に迫ります。ぜひご覧ください。
放送では、三畳紀の地層が生んだ不思議で美しい景色と、貴重な化石をたっぷりご紹介します。