特集

2019年5月26日「ルウェンゾリ山地国立公園」

標高ごとに変わる風景 数々のユニークな動植物

今回ご紹介するのは、アフリカの内陸国、ウガンダにある世界遺産「ルウェンゾリ山地国立公園」です。赤道直下のジャングルから、標高5000メートルの氷河まで、変化に富んだ環境を含む地域です。10日間に渡る徒歩での取材を敢行してきた小澤ディレクターに、ルウェンゾリ山地の自然が生み出すさまざまな風景と、そこに暮らす特徴的な動植物についてお話を伺いました。

3本ツノを持つ珍獣も!ユニークな生物の宝庫

今回はルウェンゾリ山地国立公園を、標高1600mから徐々に登っていきながらご紹介します。まずは熱帯のジャングルから。そこに住む不思議な動物や植物の貴重な映像にご注目ください。

──今回の「ルウェンゾリ山地国立公園」とは、どのような世界遺産なのでしょうか?

小澤ディレクター(以下、小澤):ウガンダにある自然遺産です。ウガンダとコンゴとの国境付近にあるルウェンゾリ山地の、標高2100メートル以上の面積99600ヘクタールの地域が国立公園となっています。ルウェンゾリの最高峰は5109メートルで、アフリカに3つある5000メートル級の山の1つなのです。10日間に渡る取材では、標高1600メートルからスタートして、徒歩で山頂の氷河付近まで迫ってまいりました。番組では、その道中でさまざまに様子が変わる風景をご紹介してまいります。

アフリカで3番目に高い山、ルウェンゾリ。その山地のうち、標高2100メートル以上の地域が国立公園に指定されています。

──具体的には、どのような風景の変化が見られるのでしょうか?

小澤:まずは、標高2000m付近の熱帯のジャングルです。この森にはダイカーという、鹿のように見えて牛の一種である動物などが住んでいるのですが、取材時にさらに珍しい動物の撮影に成功しました。ルウェンゾリの固有種であるジョンストンカメレオンです。頭に3本の角が生えたユニークな姿をしたカメレオンで、2匹のオスが縄張り争いで戦っている様子をカメラに収めることができました。

熱帯のジャングルで出会った動物たち。ジョンストンカメレオンが縄張り争いで戦う様子は必見です。

────動きがゆっくりのイメージがあるカメレオンが戦うのは意外です。

小澤:ジョンストンカメレオンがツノを突き合わせて激しく争うのは、同行したガイドも見たことがないと目が釘付けになるほど珍しいシーンなので、放送でぜひ見ていただきたいです。次に、標高3000mあたりに現れるのが、熱帯雲霧林の森です。東から吹いてきた湿った風が山にぶつかり、その結果、このエリアに霧が立ち込めるのです。常に湿度100%のこの森の木々には、大きなコケの玉が付いています。またコケだけでなく、木々にはサルオガセというレースのような地衣類が垂れ下がっていて、奇妙な光景を生み出しています。

湿った空気が標高3000メートルあたりで冷やされて霧になるため、この森の湿度はほぼ100%。そのために苔がむして地衣類のサルオガセが垂れ下がる木々の森が生まれるのです。

湿地に生える巨大な草の塊を、ドローンで真上から撮影。幾何学模様のように見える不思議な景色です。

──霧の中の苔むす森とは、幻想的な風景ですね。

小澤:高度が上がるとまた風景がガラリと変わり、次は広大な湿原が現れます。背の高い木々がなくなり、代わりに草が増えます。ただし草といっても、人の胸ぐらいまで高さがあるスゲの仲間の草が巨大な玉のようになって生えていて、独特な景色です。そんな湿原をさらに進んだあたりで、ルウェンゾリトラコという珍しい鳥を見つけました。湿原の中でひときわ目立つ派手な赤い羽根が特徴の固有種です。ほかにも、固有種ではないのですが、ブルーモンキーが標高3000メートル以上で一心不乱に植物の花をむしゃむしゃと食べる場面に遭遇しました。

ルウェンゾリ山地国立公園には、ルウェンゾリトラコといった固有種が生息しています。また固有種でありませんが、ブルーモンキーも高地の環境に適応して暮らしています。

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