菊野プロデューサーの無垢なる愛の戯言

僕には映画、本、コミック…大好きな作品がたくさんあります。
それらの作品が僕の創っているTV番組はもちろんのこと
僕の人生や、ものの考え方にも影響を与えていると思います。
そうした僕の愛した作品についての戯れ言です。
『このコラムを初めて読む方へ』

2012年 映画ベストテン 洋画編

2013年2月20日

ちょっと前になりますが、先日、和田誠さんらが池袋で開いた 「ONCE UPON A TIME 〜あの頃の歌〜」というイベントに行ってきました。
ピアニスト・佐藤充彦さんの伴奏で、歌あり、和田さんのトークあり、スペシャルゲスト阿川佐和子さんの登場あり、など盛り沢山の会でしたが、その中で、和田さんがたいへん興味深い話をしていました。
名画「カサブランカ」(1942年 監督;マイケル・カーティス)の主役は、ハンフリー・ボガードではなくて、ロナルド・レーガンがやる可能性があったというもの。
まあ、ショウ・ビジネスの世界では、よくあることとは言いながら、ボガードではなくて、レーガンというのが面白い。ロナルド・レーガンがやったら、どんな映画になったんでしょうか?!
「君の瞳に乾杯!」の名セリフをどういう顔で言ったんですかねえ。

ロナルド・レーガンといえば、中曽根元首相とロン・ヤスの仲と言われた元アメリカの大統領ですが、大統領になる前は、俳優をやっていたんですね。
マイケル・J・フォックス主演の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年 監督;ロバート・ゼメキス)では、そのことを触れたギャグがあります。
うろおぼえで、恐縮なんですが確か、30年前の世界(1955年)にタイムスリップしたM・J・フォックス演じるマーティに、“おまえの世界では、誰が大統領なんだ?”
みたいな質問があって、マーティが “ロナルド・レーガンだ” と答えると、相手が笑い、
“ロナルド・レーガンが大統領なら、副大統領はジェリー・ルイスか。”
という会話がありました。
ジェリー・ルイスというのは、1950年代頃にアメリカで人気のあったコメディアンですね。

ちなみに、この「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主役も、マイケル・J・フォックスではなかった可能性があったらしい・・。M・J・フォックスは当時、大人気だったドラマ「ファミリー・タイズ」に主役として出演中だったため、スケジュールNGで1回は、オファーを断ったそうです。
「ファミリー・タイズ」は、日本でもTV東京系で放送され、私も大好きで毎回、録画していました。数年前に、DVDが出たんですが、セレクションされているバージョンなので、完全版をぜひ、発売してください!!

話がそれてしまいましたが、好きな映画の制作秘話というか裏話は、面白いですね。

さて2012年度の洋画のベスト10です。
まず、10位〜6位。

第10位 「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」
監督;ジョージ・クルーニー

第9位  「ヘルプ〜心をつなぐストーリー〜」
監督;テイト・ライター

第8位  「トガニ 幼き瞳の告発」 
監督;ファン・ドンヒョク  

第7位  「おとなのけんか」 
監督;ロマン・ポランスキー 

第6位  「最強のふたり」
監督;エリック・トレダノ / オリヴィエ・ナカシュ


「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」
ライアン・ゴズリングは、「ラースとその彼女」では、なよっとした青年のイメージがあったんですが、今作や「ドライブ」のヒットで、クールなイメージが確立してきましたね。
裏切りが裏切りを呼ぶ、モラルなき戦いに、心が揺り動かされてしまうのは、大人の社会の厳しさを、感じてしまうことが多い現実のせいなのか・・・・。なんてね・・・。

「ヘルプ 心をつなぐストーリー」
1960年代、黒人への差別が残るアメリカ南部。黒人メイドたちの声が、1冊の本として出版される・・・。それが、アメリカの南部の町に大騒動を巻き起こす。
黒人メイドが差別に対して声をあげると同時に、白人ガールズ同士の“いじめ”もテーマになっていて、誰もが感情移入できる話になっています。

アカデミー助演女優賞を、黒人メイド・ミニーを演じたオクタヴィア・スペンサーが受賞していますが、この映画からはもう一人、ジェシカ・チャスティンが、アカデミー助演女優賞にノミネートされています。ちょっとおバカでコケティッシュな人妻を演じたジェシカ・チャスティンが、好演。ただ、映画の中では、そんなに大きな役ではない。そんな彼女をちゃんと、助演女優賞にノミネートして評価するアカデミー賞は、やっぱりすごいなあ。
ジェシカ・チャスティンは、今、日本でも公開中の「ゼロ・ダーク・サーティ」(監督;キャスリン・ビグロー)に主演していますが、全く違う魅力で楽しいです。
(しかし、「ゼロ・ダーク・サーティ」は、すごい映画だ・・・)

「トガニ 幼き瞳の告発」 
“この子たちの手を放したら、僕は父親には戻れない”
映画のコピーですが、二人の女の子の父親として、正視できない映像でした。
この映画がきっかけで、韓国では、子供に対する性暴力を犯罪への処罰を強化する法律が改正されたそうです。その法律は、この映画の名前をとって、通称“トガニ法”と言われているそうです。映画の力、そしてTVの力もですが、私たち映像現場で働くものはもっともっと意識を持たなければならないと強く思わされました。

「おとなのけんか」
舞台を巨匠、ロマン・ポランスキーが映画化したものです。
映画の中でも、ひとつの部屋の中(と、その玄関)で展開していく、いわゆるワンシチュエーションもの。
その凝縮した空間の中で、上手い役者たちが感情をぶつけるバトル。
ジョディ・フォスターでしょ。「イングロリアス・バスターズ」のクリストフ・ヴァルツでしょ。
ケイト・ウィンスレットでしょ。 そして、なんといっても、ジョン・C・ライリー。
「シカゴ」のミスター・セロファンが、この映画では、存在感ありすぎです。
(もちろん、「シカゴ」のジョン・C・ライリーも、あくまで役上で存在感のない人物だっただけです笑)

「最強のふたり」
この映画の原題は、INTOUCHABLES(フランス語)、英語だと、UNTOUCHABLE。
つまり、“アンタッチャブル”です。日本語だと、“触れてはいけない” な、わけです。
日本だと、“最強のふたり”という、受けやすいタイトルにしていますが(この邦題が悪いといっているわけではありません、念のため)、本来は、もっと毒のあるタイトルなのです。
作品の中では、その原題の通り、スパイスの効いた会話がどんどん出てきます。
クビから下が麻痺してしまった男に対し、黒人青年が“これは健常者の食い物だ”といって、いじわるしてあげなかったり・・
対等に付き合うことと、同情して付き合うこと、対・身障者だけではなく、人間関係について本当に考えさえられる良品です。

さて5位から・・・
なんか、6位までを書きすぎましたね。これからは、ちょっと簡単に・・・・

第5位 「ミッドナイト・イン・パリ」
監督;ウッディ・アレン 

今年は、W・アレンのドキュメンタリーも公開されましたが、老いてますます盛んのW・アレンでした!!
W・アレンの映画というと、恵比寿ガーデンシネマで、本当によく見た記憶がありますが、その映画館も2011年11月で閉館してしまいました。
「ミッドナイト・イン・パリ」は、渋谷のBunkamuraで見ましたが、恵比寿のことなどを思い出しながら、見ましたね・・・

第4位 「アーティスト」
監督;ミシェル・アザナヴィシウス

アカデミー賞作品賞を受賞した本作。
ある種、戦力外通告を受けた俳優の物語でもあります。

上がっていく人がいる・・・
一方で、落ちていく人がいる・・・

そんなクロスの構図がサイレント映画の中で象徴的に描かれ感情に訴えてきましたね。

さて 3位は・・・
「アルゴ」
監督;ベン・アフレック

イラン革命の最中に、アメリカ大使館から脱出した6人を救出するため、本国から乗り込んだCIAのエージェント。彼が提案した作戦は驚くべきものだった!
この映画、半端なく面白いです! 公開の頃、私の周囲の映画好きの会話は・・・
「アルゴ見た?」でしたね。
舞台設定は1979年。この時代は、1978年の「スターウォーズ」日本公開に始まり、爆発的なSF映画ブーム。だからこそ、SF映画の撮影のロケハンのためにイランに来た、なんていうストーリーが成立したんですね・・・

2位は・・・
「別離」
監督;アスガー・ファルハディ

昨年度のアカデミー外国語映画賞受賞作品です。
監督のアスガー・ファルハディは、「彼女の消えた浜辺」という大変印象的な映画をかつて作っています。

私はプロデューサーとして番組を作る場合、(特に、「バース・デイ」「プロ野球戦力外通告」「プロ野球選手の妻たち」など)口をすっぱくしてディレクターにある指示をします。
それは、登場人物に観客が(視聴者が)感情移入できるようドラマを描かねばならない。
とくにそれは、番組の導入部では非常に重要な要素です。

しかし、この「別離」は、前半、登場する複数の登場人物に対し、観客が“誰かに感情移入しないよう”描かれています。
そのことが、後半、起こる“事件”に対し、観客は余計な感情なく見られるのです。
そして、“事件”が起きてからは、それぞれの人物の事情が、まるで自分のことのように深く心に訴えてきます。
とてもよくできた脚本でした。
そして、アカデミー賞ってやっぱりすごいのは、この映画を脚本賞にノミネートしていることです!!イラン映画ですよ。アメリカ映画じゃないんですよ。
(もちろん、過去にそういう例はいくつもありますが・・・)
さすが、世界を相手にしているアカデミー賞だよな。
日本のは、日本アカデミー賞ですからね・・・

それにしても、レイラ・ハタミが、なんてきれいなんだ!

そして1位は・・
「サニー 永遠の仲間たち」
監督;カン・チョンヒル 

この映画は、世代によって感じ方が違うと思いますが、私は映画の登場人物たちと同じ1968年生まれです。だからということもあると思いますが、・・・・
むちゃくちゃ感動しました。泣きました。
「ラ・ブーム」(1980年 仏 ソフィー・マルソー主演)とか、もうリアルタイムに味わってきた青春時代。その音楽が効果的に使われる演出。
そして1968年生まれの彼女達が、40歳をすぎ・・・・、それぞれの人生を送っている。
幸せなものもいれば、死と向き合っているものもいれば、夫に不満をもっているものもいれば・・・
まさに彼女達の生き方は、私にとっても本当にリアルで、もう感情移入しまくりで・・・

というわけで、やっぱり映画って、人によって受け止め方が大きく違うわけで、
若い人が観ると、この「サニー 永遠の仲間たち」は、そんなに“来ない”のかもしれないけど・・・私にとっては、2012年NO.1映画でした。
R40、R45の方は、是非是非、ご覧くださいませ。

偉そうに、書いてきましたが、あくまで、私見ということで・・・
お許し下さい。

娘たちよ、大きくなったら、いつか見てみてね。


『菊野浩樹』の写真

菊野浩樹 プロフィール

1968年 5月14日 生まれ
1992年 TBS 入社
「アッコにおまかせ!」「ザ・フレッシュ」「筋肉番付」「ZONE」「世界陸上」「K1ダイナマイト」などを担当。

「バース・デイ」をはじめ、「プロ野球戦力外通告〜クビを宣告された男たち」「ラ イバル伝説…光と影」「プロ野球選手の妻たち」「SASUKE RISING」など、数々のス ポーツ特番やドキュメンタリー番組を手がける。

関連番組一覧

『バース・デイ』
毎週土曜午後5:00〜
『サワコの朝』
毎週土曜午前7:30〜