火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』

北川悦吏子スペシャルインタビュー interview

第1回 2023.01.27up

広瀬すず×永瀬廉が送る“青春ラブストーリー”が
視聴者を魅了している『夕暮れに、手をつなぐ』

九州の片田舎で育ち婚約者を追って上京した浅葱空豆(広瀬すず)と音楽家を目指す青年・海野音(永瀬廉)が出会い、ひょんなことから一つ屋根の下で暮らすことになりそれぞれの夢を追う。
『オレンジデイズ』(TBS)以来、実に19年ぶりにTBSで“青春ラブストーリー”を手がけるという脚本家の北川悦吏子に、本作に込めた想いやこだわり、見どころなどを聞いた。北川へのインタビューの様子は全4回に分けてお届けする。

意外にもこれまで王道ラブストーリーを演じることのなかった広瀬と、本格ラブストーリー初挑戦となる永瀬の掛け合いが愛おしく魅力的な本作。キャスティングの背景について北川は「まず広瀬すずさんで“青春ラブストーリー”をやりたいというのがあって、生命力の溢れる女の子を書きたいと思いました。そうなった時に相手役は永瀬廉さんがいいんじゃないかと考えました。私の書く男の子にビジュアルや雰囲気が向いていそうで、ちょっと影がある感じもぴったりだと思いました」と明かした。

制作発表会見でも、北川はこの2人の組み合わせが思い浮かんだ際に、元々考えていたタイトル『夜に、手をつなぐ』とストーリーをガラリと変えたと話していた。

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そんな2人の運命的で衝撃的な出会いが第1話冒頭に描かれた。すれ違い様にぶつかった弾みで落としたワイヤレスイヤホンが入れ替わっていることに2人はすぐには気がつかない。2人ともに同じ曲を聴いていたという偶然がその後明かされる。この出会いのシーンはどうやって生まれたのだろうか。

「私、左耳が聴こえないのでイヤホンは”片耳派”しかないんですよ。AirPodsで音楽を聴きながらよく散歩しているんですが、このシーンは交差点で信号待ちをしている時に思いつきました。イヤホンって1人でも落とすことあるじゃないですか?もしここで誰かとぶつかってイヤホンを落としたら…間違えて相手のものを拾ってしまうこともあるよな〜と思って。そこでさらに同じ曲を聴いていたらすごい偶然じゃない?!って。この出会いはいつか書きたいと思っていました」

自分でもこのシチュエーションについて検証したと話す北川。「どれだけ離れたらイヤホンから音が聴こえなくなるか自分でも試しました。さすがに道路では再現できないから、マンションの5階にスマホを置いて検証しましたが、イヤホンしたままエレベーターで移動して3階あたりから聴こえにくくなるなぁって」

もちろん現場でも検証を入れ制作されたが、まずは自身で同じ状況を再現し確かめてみるのがさすが実体験を重んじる北川らしい。さらにTwitterで“片耳イヤホン派”の人がどれくらいいるか、その理由と共に意見を募ってみたところ、聴力にかかわらず一定数“片耳イヤホン派”が存在することを知ったという北川。

「あの時、Twitterでの私からの問いかけに協力してくれた人は、それが今回の2人の出会いのシーンに繋がっているんだと気づいてくれたら嬉しいなと思います」

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忘れられない印象的な出会いのシーンと同じく、“らしさ”が滲むピッタリなキャラクターの名前と、それを呼び合う際の共鳴が美しく特別な響きがあるのも北川作品の特徴に挙げられる。第1話でも空豆と音が互いの名前を認識し、初めて呼び合うシーンは彼らがお互いの輪郭をなぞり、新しい世界と出会い足を踏み入れていくことを予感させるきらめきに溢れていた。そんな彼らそれぞれの名前の由来を聞いてみた。

「空豆という名前は、実は、主を失くした名前なんです。私は、もう何年も前から、「空から降るツイート」といって、Twitterで短い詩のようなセリフのようなものを思いつくままPOSTしているのですが、今から7~8年前、娘が高校生の頃、その私の「空から降るツイート」と娘の写真を合体させてFacebookにあげていたことがありました。そうしたら、ある出版社から写真詩集にしないか? というお話をいただいて。「恋をしていた」という写真詩集を出すことになりました。
表紙に私の名前とカメラマンの名前をクレジットしなければなりません。高校生の彼女は本名で写真詩集を出すことを嫌がりまして、そこで、娘が自分でつけたカメラマンネームが“あさぎ空豆”だったんです。私は、娘があさぎ空豆というカメラマンになるか、と思っていたのですが、彼女にその気は全くなく、普通に大学に行き、今は会社員です。だから、この、あさぎ空豆という名前は、それっきり、“主(ぬし)を失くした名前”になりました。ただ、とても綺麗な名前だったので、私の胸には残っていました。今回、九州、空豆畑の近くで育ったヒロインということで、頭の中でシンクロして、娘に許可を取ってヒロインの名前にもらいました。空豆、という名前がどうしても、このドラマには必要だと思いました。」

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音については「音楽をやる人」ということからそのまま名付けられたようだが、“名は体を表す”という言葉通り、なんとも2人らしい印象的な名前だ。北川はキャラクター命名の裏側をこう話す。

「テレビを観ている視聴者の皆さんは、名前を音で認識されるので、まずは漢字というよりは語感や響きから考えています。『オレンジデイズ』の時も最初はキャラクターの名前は片仮名で書いていました」

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そして、キャリアの長い北川ならではのこんなエピソードも。「ただ、これだけ脚本を書いているとキャラクター名も二巡目に入っていて。今作の響子(夏木マリ)と『Beautiful Life ~ふたりでいた日々~』(TBS)の杏子(常盤貴子)は、漢字も由来も違いますが同じ名前ですね。ただ響子には『めぞん一刻』の管理人・音無響子が時を経てこんな風になっていたらいいなという願望を込めたりもしました」と遊び心を覗かせた。

文:佳香(かこ)

佳香(かこ)プロフィール

出版社勤務を経て、パラレルキャリアでライターに。映画・ドラマを中心に様々な媒体でエンタメ関連のコラムを執筆中。ビジネス媒体でのインタビュー&執筆実績もあり。

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