美肌LESSON

Vol.9
美肌のために『皮膚の善玉菌』の力を活用する!

人間の細胞の数はおよそ60兆個。しかし驚くべきことに人間の体に常在している常在菌の数はそれを大きく上回る100兆個以上と言われています。これだけ多くの常在菌に囲まれて生きていますので、その菌のバランスが人間の健康状態にも当然大きく影響してきます。
以前から腸の中に存在する細菌(腸内細菌)に関しては、人間に対してよい影響を与える『善玉菌』と、逆に悪い影響を与える『悪玉菌』と分けられて研究されてきました。乳酸菌やビフィズス菌などが善玉菌の代表格として有名です。そしてさらに最近では、乳酸菌の中でも「アレルギー症状を抑える効果がある乳酸菌」や「免疫力が高める作用がある乳酸菌」「脂肪の燃焼を促す乳酸菌」などより細かく分類されるようにまでなってきました。
もちろん皮膚表面にも様々な常在菌が存在しています。腸内細菌の研究と比べると遅れをとっていましたが、最近では皮膚にも『善玉菌』と『悪玉菌』がいることがわかってきて、さらにその役割について詳しく研究されるようになってきています。

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皮膚の善玉菌の代表は「表皮ブドウ球菌」
表皮ブドウ球菌は表面から角質層内にかけて生息し、人間の皮脂や汗の成分をエサにしています。この菌が作り出すグリセリンや有機酸は人間の肌を保湿して、外部からの刺激や乾燥から守る働きをしてくれています。それだけでなく、「抗菌ペプチド」と呼ばれる物質を出して悪玉菌の増殖を防ぐ役割も果たします。しかし「黄色ブドウ球菌」は悪玉菌の代表格で、アトピー性皮膚炎を悪化させる原因となったり、肌荒れを起こす原因となることがあることがわかってきています。
一方でニキビの原因菌といわれ、単なる悪玉菌のイメージが強い「アクネ菌」は実は数種類のタイプに分けられ、タイプⅠだけがニキビの原因菌(悪玉菌)となり、タイプⅡやタイプⅢなどはむしろ弱酸性の肌を保つのに必要なよい働きをしている(善玉菌)ことも明らかとなっています。
このように皮膚常在菌の研究が日進月歩で進むにつれ、美肌維持にとってますます『皮膚善玉菌』は無視できない存在となってきて、美容皮膚科医も注目しています。

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洗顔をすればするほど『善玉菌』を減らしてしまう
洗顔料を使って洗顔をするとサッパリとして気持ちがいいですね。ところが善玉菌の表皮ブドウ球菌は皮脂や汗、角質をエサとしています。洗顔のし過ぎはこれらのエサを過剰に取りすぎてしまうばかりでなく、洗顔料に含まれる界面活性剤や防腐剤などの成分によって善玉菌が殺菌されてしまいます。洗顔のし過ぎは肌の表面に存在している善玉菌を減らしてしまい、逆に肌のトラブルを招く可能性があるのです。
皮膚の善玉菌を保って美肌を維持するために、すぐにでもはじめられる習慣2つをお話します。

皮膚善玉菌の力を保つ習慣①
朝の洗顔は洗顔料は使わず、ぬるま湯だけにする。
皮脂や空気中のチリなどの汚れは、ぬるま湯で洗えば十分に落ち、善玉菌が育つのに大切な適度な皮脂を保つことがきます。夜もクレンジングと洗顔料のダブル洗顔、そして朝も洗顔料洗顔を行うと、皮膚の善玉菌を大きく減らすばかりでなく、美肌を保つために必要な菌の数に回復する時間も確保しにくくなります。

皮膚善玉菌の力を保つ習慣②
肌荒れをした時にはメイクと洗顔料洗顔をやめてみる
なんとなく肌の調子が悪いと感じた時、よりしっかりと洗顔することが逆効果となる可能性があります。可能であればメイクをしない「肌の休日」を設けて、洗顔料も使用せず「善玉菌を育てる」意識をもつのもよいでしょう。

みやび先生も皮膚の善玉菌のことを「美肌菌」と呼び、美肌のキーワードの一つとして美容皮膚科の診療では重要視しています。第7話では、母校の清林大学からは、皮膚常在菌に関する学生向けの講義を依頼する内容の手紙がクリニックに届いていました。美容皮膚科医も皮膚の善玉菌は注目し始めています。

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医療監修・橋本 聡
東京・広尾の美容皮膚科『スキンリファインクリニック広尾』院長。
専門は美容皮膚科、皮膚科、美容外科。日本美容外科学会認定、美容外科専門医。
日本医科大学卒業後、日本医科大学形成外科助教を経て、平成26年にスキンリファインクリニック広尾を開業。

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