===森本毅郎・スタンバイ！===

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「マザー・テレサ」「サヨナラCOLOR」

2005年08月09日

「マザー・テレサ」 8/13(土)公開

マザー・テレサは７９年にノーベル平和賞を受賞して、８１、８２、８４年と３度も来日して、日本人にも親しまれている人物で９７年、８７歳で亡くなるまでの半生を映画化。
主人公を演じるのは、オリビア・ハッセー。
彼女自身も熱心なキリスト教徒で、２０年前からこの役をやりたいと熱望していたという。
オリビア・ハッセーも今年５４歳。「ロミオとジュリエット」で国際的脚光を浴びたのが、１５歳のときだった。２０歳のときに、ディーン・マーティンの息子と結婚。
そして、１９８０年、２９歳で布施明と再婚したことも大きな話題となった。
映画は１９４６年、インドのカルカッタで神の声を聞くところから物語は始まる。
「居場所は修道院の中ではなく、カルカッタの貧しい人々が苦しんでいるスラムだ」
というわけで、彼女が修道院を飛び出して、様々なトラブルに強い信念で体当たりしていく姿を描いていく。
なんといっても、見所はノーメイクでもそっくりの年齢に達したハッセーの熱演ぶりで、深く刻まれた皺もここでは効果的に活かされている。

「サヨナラCOLOR」 8/13(土)公開

竹中直人監督の新作。テレビドラマや映画の脇役、舞台や音楽活動など超多忙でいつ映画を撮る時間があったのだろうと思われる竹中だが、この作品は、４年ぶり。監督として５作目になる。
ＳＵＰＥＲ　ＢＵＴＴＥＲ　ＤＯＧのヒット曲、「サヨナラＣＯＬＯＲ」を元に、竹中自身が、オリジナルの共同脚本を手がけている。
彼が演じる主人公は、海を望む病院に勤務する医師。
独身ながら居酒屋の女将さんと長年付き合い、それに加えて、女子高生と援助交際中という自堕落な生活を送っている。
そんなある日、高校時代の同級生（原田知世）が子宮ガンを患って入院してくる。
かねて憧れの的だった彼女の治療にあたるが、彼女は彼のことを全く覚えていないという。
そこで、なんとか自分のことを思い出してもらおうとする主人公の切なくコミカルな大人のラブストーリーになっている。

「コーチ・カーター」「ターネーション」

2005年08月02日

「コーチ･カーター」 8/6(土)公開

サミュエル・Ｌ・ジャクソン（「スターウォーズ」新シリーズでも活躍」）が実在の高校のバスケットボールチームのコーチを演じる。
映画の前編は、このコーチ・カーターの猛特訓の成果でチームが連戦連勝、地区大会に優勝するまでを描いていく。
ところが、突然、コーチの独断でより大きな大会への出場停止、練習禁止という事態が発生する。
生徒たちはもとより、地元の住民たちも巻き込んで、全米で報道されるほどの大事件に発展。
これが１９９９年に実際に起こったこと。
チームのメンバーの中には、読み書きができない者や父親が服役中という者、ドラッグディーラーの手先などがいて、貧困と犯罪の誘惑を断ち切るには、教育をしっかり身につけるということがコーチの信念だった。
試合に勝つことよりも社会で勝つことを生徒たちに教えようとしていた。
というわけで映画の後半は孤立したコーチと彼を理解していない社会との闘いが見所になっていく。

「ターネーション」 8/6(土)公開

製作当時３１歳の無名の俳優ジョナサン・カウエットが自分自身の人生をパソコンを駆使して、ドキュメンタリーに仕上げた異色作。
製作費はたった２万円余りだが、この作品は全米批評家協会賞の最優秀ノン・フィクション映画賞を受賞したほか、カンヌ国際映画祭や東京国際映画祭でも大きな話題になった。
タイトルの意味は、「地獄に落ちること」、あるいは「破滅」といったニュアンスで、カウエットの虐待という悲惨な人生が生々しく綴られていく。
無数の家族の写真や幼いころからとりためた８ミリや１６ミリ、それからビデオテープなど豊富な素材を自らパソコンで編集して、自分史として完成させた。
パソコンで手軽に映画を作るという新しい可能性を感じさせる点でも注目の作品。

「チーム★アメリカ／ワールドポリス」「ある朝スウプは」

2005年07月26日

「チーム★アメリカ／ワールドポリス」 7/30(土)公開

世界征服をたくらむ独裁者を相手に地球を守るために男女５人の世界警察、その名もチームアメリカが大活躍するという壮絶なアクション編。
ところが、なんとこの映画、全編、パペット（操り人形）アニメで、「サンダーバード」を思わせるパペットたちが、アクションに加えて、歌って踊るというミュージカル仕立てで痛烈なパロディを繰り広げていく。
ＣＧ全盛の時流に逆らって、あえて手間ひまのかかるパペットに挑戦したへそ曲がりな作者は、トレイ・パーカーとマット・ストーンのコンビ。（過激アニメ「サウスパーク」で有名）
アニメといえば、お年寄りからお子様向けというのが常識だが、この映画はＲ１８指定（１８歳未満お断り）。
それというのも、全裸のパペットたちのベッドシーンが、これでもかというほどあからさまに展開されるためもあるが、ギャグの大半が現在の世界情勢をパロディにしたためもありそうだ。
最大の見ものは、悪玉として登場する金正日（パペットが瓜二つ！）。
その彼が、アンチブッシュ派の知性派を気取るハリウッドスターたち、ショーン・ペンやティム・ロビンスらと手を組んでチームアメリカと対決。
さらに返す刀で、世界の警察を自負するブッシュ政権もばっさり。

「ある朝スウプは」 7/30(土)公開

高橋泉（３２歳）監督のデビュー作。
去年のぴあフィルムフェスティバルのグランプリを皮切りにその後、カナダ、香港、イタリアなどの映画祭で軒並みグランプリを受賞した話題作。
主要登場人物は、狭いアパートで同棲中の若いカップル。
男（廣末哲方）はパニック障害に陥り、在宅勤務のパソコン入力の仕事を見つけ、そのためのセミナーに通っている。
女（並木愛枝）は、ある日、彼のセミナーの実態が新興宗教であることを知る。
その彼を日常に呼び戻そうとする彼女と。彼女を宗教に引きこもうとする彼との７ヶ月間の日常をデジタルビデオでドキュメンタリーのごとく観察していく。
演出、脚本、演技の三拍子そろった、地味だが、見事な傑作。

「アイランド」「リンダ　リンダ　リンダ」

2005年07月19日

「アイランド」 7/23(土)公開

マイケル・ベイ監督のＳＦアクション映画。
　「アルマゲドン」で名を上げながら、「パール・ハーバー」でヒンシュクを買っただけに、素直に期待できないところだが、キャスティングが魅力的。
主演がユアン・マグレガー（「スター・ウォーズ新シリーズ」で大活躍）とスカーレット・ジョハンソン（「ロスト・イン・トランスレーション」でブレイク）
物語は２０１９年、放射能汚染された地上から隔離された地下の施設で数百人の男女が、厳重な管理のものとで生活している。
彼らの夢はときどき抽選でリゾートアイランドに移住させてくれること。
主人公のマグレガーはある日、その島（アイランド）にまつわる恐ろしい秘密を知り、ジョハンソンとともに施設からの脱出を図る。
そこから、この映画はカーチェイスや空中戦など、壮絶なアクションの連続となる。
良くも悪くもベイ監督の持ち味が存分に発揮される。
走り出すとブレーキがきかなくなる暴走振りには、命がいくつあっても足りない荒唐無稽さ。

「リンダ　リンダ　リンダ」 7/23(土)公開

８０年代後半に大ヒットし、今でも有線やカラオケでかかるブルーハーツの人気曲「リンダリンダ」をモチーフにした青春映画。
高校生活最後の文化祭を向かえ、本番三日前に空中分解してしまった４人組のガールズバンドが急遽オリジナルをあきらめ、がんばって「リンダリンダ」をコピーしようという物語。
バンドのボーカルにスカウトされるのが韓国からの留学生という設定で、韓国女優ぺ・ドゥナが起用されている。
この女優さんは２４歳で、役どころよりも１０歳も年上だが、言葉も不完全で、バンドの仲間たちとは何かとペースがずれてしまう３枚目的キャラクターを好演している。
監督は若干２８歳の山下敦弘。なんとこの若さでこれが長編５作目。
最近の邦画界では若手監督の活躍が目立つが、彼もその一翼を担う１人。

「ライフ・イズ・ミラクル」「運命じゃない人」

2005年07月12日

「ライフ・イズ・ミラクル」 7/16(土)公開

旧ユーゴ（現ボスニア・ヘルツェゴビナ）生まれのエミール・クストリッツァ監督の新作。
５０歳になる彼は、今年のカンヌ国際映画祭で審査委員長を務めたことでも知られる。
映画の背景になるのは１９９２年の内戦勃発直後のボスニア・ヘルツェゴビナ。
主人公は、セルビアとの国境に近い村に住む鉄道技師。
戦争が始まると同時に妻がハンガリー人と駆け落ちしていなくなり、息子も徴兵され、しかも捕虜になるという悲惨な状況。
その彼の元に捕虜の交換要員として捕らえられたムスリム人の若い女性が預けられ、監視することになる。
ところが、主人公は彼女に恋をし、２人は愛し合うようになる。
さらに捕虜交換の日も迫ってくる。彼女をとるか、息子をとるか・・・
このような切ない状況を描きながら、クストリッツァの語り口は、ユーモラスでコミカル。
のどかな田園風景をうたい、例えば、失恋して涙を流すロバが登場したり、熊、犬、猫、鶏など、動物たちが入り乱れて笑いを誘う。
そして、最後はタイトル通りミラクルなエンディングに向かっていく。

「運命じゃない人」 7/16(土)公開

新人監督内田けんじ（３２歳）のデビュー作。
今年のカンヌ国際映画祭で批評家週間に出品され、脚本賞など、なんと４つの賞を受賞した話題作。
若い５人の男女の一晩の出来事を描いたサスペンスフルなコメディ。
主人公は、「いい人」を絵に描いたようなサラリーマンで、婚約を前提に高級マンションを購入したものの、恋人に捨てられ、失意のどん底。
その彼がレストランで若い女性と出会い、２０００万円盗難事件に巻き込まれていく。
最大の見所は、「メメント」や「パルプ・フィクション」を思わせる時間軸の交錯で、一晩の出来事がさまざまな角度から視点を変えて描かれ、最後にジグソーパズルが完成するという手法。
言い換えると脚本の構成が実に緻密。
内田監督は高校卒業後、サンフランシスコの大学で映画を専攻して、脚本がいかに重要であるかをみっちり勉強してきた、と言っている。

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