あらすじ:
黄門さま(佐野浅夫)一行は秋田杉の名産地、久保田に着いた。美しい杉の森に感心する黄門さまだったが、突然女の悲鳴が聞こえ、現場に駆けつける。しかし一足遅く、山の役人たちに襲われた、お千代(森永明日夏)は崖から落ちてしまった。
お千代は運良く一命を取り留め、偶然通りかかった飛猿(野村将希)と木こりの一平(沖田浩之)が手当をする。
久保田では、藩の重要な産物の杉は厳重に管理されていたが、次席家老の飯山角兵衛(内田勝正)は材木問屋、湊屋郷右衛門(早川保)と結託し、材木を横流ししては私腹を肥やしていた。
悪事に気付いた国家老の渋江宗右衛門(佐竹明夫)は証拠をつかもうと懸命だ。一平は渋江の命を受け、山に潜入していたのだ。
また、一平の妹、菊江(牛尾田恭代)も江戸からの情報を渋江に伝えるため、久保田へ向かっていた。お千代は菊江と間違えられて、襲われたのだった。
お千代は信州、松代の出身で、国元で一大事があり、黄門さまを探して旅をしているのだと明かす。お千代が奉公する家の若殿さまが、お城に上がったまま行方が分からないのだという。何か事件に巻き込まれたようだ。
一行は、久保田の騒動を収め、松代へと向かう…。
黄門さま(佐野浅夫)一行は象潟に着いた。黄門さまは名主の太郎兵衛(市川左團次)と出会い、一人娘の志津(田中由美子)に結婚するよう説得して欲しいと頼まれた。
太郎兵衛によると志津は頑固者で手を焼いている、とのことだったが、会ってみると礼儀正しい娘で、黄門さまは意外に思うのだった。
志津には将来を誓った友吉(野土晴久)という若者がいるが、太郎兵衛を一人残して嫁には行けないと訴える。それならば、太郎兵衛に後添えを探そうと、助さん(あおい輝彦)が協力するのだが、堅物の太郎兵衛はあまり乗り気ではない。
やがて黄門さまの説得も功を奏し、志津は友吉との婚礼を承知する。すると太郎兵衛はなぜか結納、そして仮祝言と、事を異常に急ごうとする。
それには訳があった。話は一年前にさかのぼる。殿様の六郷正晴(石井浩司〉が検分に訪れた時、太郎兵衛が用意した昼食の米を、正晴がたいそう気に入った。正晴は藩の名産にしようと、今年はその米のみを作るよう命じたという。米は太郎兵衛が工夫して育てた新種だった。
しかし、その米は収穫率が悪く、年貢を納めると農民たちにはほとんど米が残らない。一身に責任を感じた太郎兵衛は、殿様に命を懸けてそのことを訴えようと決めていたのだ。
黄門さま(佐野浅夫)一行は鶴岡へ。この地では黄門さまのかつての囲碁相手、鷲神外記(土屋嘉男)が国家老を勤めており、黄門さまは再会を楽しみにしていた。
道中一行は、伸之介(てらそま昌紀)という浪人と知り合う。伸之介は人柄がおおらかで、剣の腕も確かだった。伸之介は偽名を使い、本名は明かさなかった。
街に入った一行は、商店がどこも商いをしていない事に気付く。絵ろうそく問屋の嘉兵衛(守屋俊志)から次席家老の藤堂左京(南条弘二)が実権を握ってから、法外な金を取られるようになり、商売が成り立たなくなったと聞かされる。
鷲神外記は病の床にあり、藤堂は自分が外記に取って代わろうと企んでいる。外記の息子、元之丞(鼓太郎)が藤堂をいさめようとするが、藤堂の悪知恵が勝り、鷲神家に伝わる殿様拝領の刀を巻き上げられてしまった。
ところで伸之介も外記の息子で、十年前に勘当されていたのだが、外記が苦境に陥っていると聞き舞い戻って来たのだった。
伸之介は自分が外記と血がつながっていないことを知り、実子の元之丞に家督を護るため、勘当されるよう振る舞ったのだ。
刀を取り戻そうとする伸之介。一行も加勢するのだったが…。
黄門さま(佐野浅夫)一行は村上へ。足にまめができた黄門さまを年寄り扱いする、助さん(あおい輝彦)、格さん(伊吹吾郎)、八兵衛(高橋元太郎)と別れ、黄門さまは一人で先を急いでいた。
ところで、町中で物産問屋を営む三面屋光兵衛(みおもてやこうべえ・佐野浅夫・二役)は黄門さまと瓜二つだった。三面屋は藩の御用を務めており、殿様から金盃を拝領していた。光兵衛の店では堆朱(ついしゅ)などの漆を使った品物を扱っている。光兵衛は強欲な年寄りで、店の者や職人たちから恐れられていた。
堆朱の仕事場を訪ねた黄門さまは、光兵衛に間違えられて目を白黒。一方、助さんたちも、光兵衛を黄門さまと間違えて、怒鳴られてしまう。
さて、笹川屋(梅澤龍峰)は藩御用の権利を三面屋から積取りしようと、代官の棚橋権十郎(原口剛)に悪巧みを持ち掛けていた。
その事を偶然知った職人の富松(高松しげお)は、光兵衛に知らせようとするが、発作で倒れ掃らぬ人となる。
また、笹川屋は三面屋の番頭、治助〈青郷流号)をそそのかし、金盃を奪う。黄門さまは光兵衛に成りすまし、代官所へ赴くが…。
黄門さま(佐野浅夫)一行は新津に到着した。一行は道中、平作(大出俊)という腹を空かした初老の男と出会った。
この辺りでは、臭水という土から湧き出す油が取れる。燃料や明かりにも使えるが、下手に使うと爆発するという危険な代物だった。だが、油問屋の菱屋徳兵衛(田口計)が菜種油やろうそくの商いを独占しているため、貧しい者たちは臭水を使わざるを得なかった。菱屋は藩の重役と結託し、悪事を働いている。
平作は新津出身で、臭水を安全に使うための精製の技術を求め、十年も諸国を旅してきたという。やっとその技を開発し、人々の役に立てようと、故郷に戻ったところだ。
平作は早速、家族を訪ねるが、妻が五年前に病没したと聞かされ、愕然とする。一人娘のおくみ(八木小織)は医師の土屋源庵(竹本孝之)と夫婦になり、おゆき(岡本伊代)という娘を儲けていた。おくみは母と自分を捨てた平作を許すことができない。
ところが、おゆきが菱屋の息のかかったやくざのために大怪我を負わされた。源庵の見立てでは、この一夜が峠。一晩の看病は臭水では無理だ。平作はおゆきのため、臭水を精製するのだったが…。