放送内容
フィリピン、ルソン島にそびえるコルディレラ山脈。その山肌を埋め尽くす壮大な棚田群が世界遺産だ。階段状に連なる水田の畦道は総延長2万キロ、地球半周分に達するという。
断崖のような急斜面に作られた棚田は、傾斜角なんと70度。世界でも類を見ない急勾配の棚田だ。作ったのは山岳少数民族イフガオの人々。今回は棚田誕生の秘密と山の民イフガオの独特な暮らしぶりに迫る。
最大70度 急斜面の棚田
「天国への階段」と呼ばれる急斜面の棚田。山頂付近の棚田の傾斜角はなんと70度。棚田が作られ始めたのは、大航海時代の16世紀。植民地化を進めるスペインの支配から逃れるため、山岳地帯へ移り住んだ少数民族イフガオの人々が、険しい山を切り拓いたのだ。
精霊と生きる山の民
常夏のフィリピンとはいえ冬場の気温は5度にもなる山岳地帯。イフガオの人々は厳しい環境で米を作ってきた。彼らはあらゆる自然に精霊が宿ると信じ、家には稲の精霊を祭っている。そして田植えや稲刈り、農作業の節目に精霊に捧げる儀礼をおこなってきた。
棚田の危機
温暖化の影響により1990年代後半から集中豪雨が増え棚田に危機が訪れる。山の木々を伐採したためだ。森を失えば山は保水力を失い崖崩れが起こりやすくなる。しかし国内外からの支援により植林や棚田の修復が進み、2012年に危機遺産の指定が外された。