放送内容
絵画のような美しい田園風景が広がる、イタリアのトスカーナ州のオルチャ渓谷。そこは、イタリア有数の穀倉地帯であるが、かつては不毛の荒野だった。大規模な開墾が始まったのは700年以上前。以来、名もなき農民たちが、何百年もかけて実りの大地に変えたのである。なぜオルチャ渓谷の開墾が進んだのか?中世からルネサンス時代にかけて、オルチャ渓谷が歩んだ歴史を辿りながら、絶景が生まれた秘密に迫る。
人が生んだ絶景
オルチャ渓谷の本来の姿は、農業には適さない粘土質の白い土壌である。しかし、中世の頃より、人々は土に家畜の糞を混ぜるなど手のかかる土壌改良を続け、美しい田園風景をつくり上げたのだ。
丘の上の要塞都市群
オルチャ渓谷には、イギリスとローマを結んだ街道が縦断している。中世ヨーロッパで重要だった街道沿いには、いくつもの都市が生まれ、領土をめぐって争っていた。そのため、丘の上につくられた都市は戦いに備えて要塞化し、砦や城壁が築かれた。
ルネサンスが輝かせた田園
中世、トスカーナで絶大な力を持っていたシエナ。それまで手つかずだった荒れ地の開墾を推し進め、オルチャを一大穀倉地帯に変えた。ルネサンス時代になると、田園風景にも人の手で美しさを加えようという考えが生まれ、オルチャの魅力が増した。