特集
オーストラリア東海岸スペシャル

終始穏やかなグレートバリアリーフの内海で、繁殖と子育てを行います。
─実際に会えたのは取材を始めてからどれくらい経ってからだったのですか?
井上:実は取材の初日、船員が見かけたらしいのです。そのときは一瞬で、私は見ることができませんでした。ミンククジラは、ほぼ水中で撮影することになるので、しっかりと映像に収めるにはクジラにすぐそばまで近寄ってもらう必要がありました。その後、3日間はクジラの姿を見ることなく取材が進んでいきました。
─そしていよいよ、ミンククジラとの対面ですね。
井上:はい。最初の出会いから3日後の移動中、再び船員がミンククジラを見つけました。船員たちは海の中に飛び込んで、水面を叩いたり奇声を発したり、クジラの鳴き真似をしたりして大騒ぎします。これは好奇心旺盛なミンククジラを呼び寄せるための方法です。ホエールウォッチングの際には、クジラを船で追いかけることは禁止されているので、近寄ってきてもらう必要があるのです。こうして、ミンククジラをカメラに収めることができました。ホッとして、この日の夜は持参したワインで乾杯しましたね。

グレートバリアリーフの外海は深さが1000mほどです が、大陸側の内海は約200mの浅い海になっています。 上空から見ても海の色が違って見えます
─幸運にもミンククジラと出会えて、貴重な映像が撮影できましたね。ほかに取材で苦労したことはありますか?
井上:実は私、船に弱いんですよ(笑)。グレートバリアリーフは、場所によってはオーストラリア大陸から100kmほど離れているので、船で長時間移動する必要があります。初日からひどい船酔いで、船上からの撮影は私が担当することもあって回りからも心配されました。その後もずっと船の上だったのですが、2日目からはすっかり復活してバッチリ撮影もできました。
