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コモド国立公園

西カメラマンインタビュー

Q:こういった危険な動物を撮影に臨むときは細心の注意が必要だと思うのですが、接近して「これはいいカットが撮れるぞ」という思いと、襲われるかもしれないという恐怖との葛藤はありませんでしたか?

コモド国立公園

これまで世界遺産へ取材を含め、さまざまなところへ行きましたが、実は、野生の大型動物にこれほど近づいて撮影するというのは今回が初めての経験でした。コモドドラゴンが人間を襲ったという事件のことは知っていましたが、コモド国立公園のレンジャーからは「攻撃を与えなければおとなしい動物だ」と聞いていました。今回の取材にはそのレンジャーたちに常に同行してもらっていました。彼らは「トンカツ」という二股の棒を持っていて、ドラゴンはそのトンカツを顔の前に出されるとぴたっと止まる習性があり、それで止めてくれるのです。
ただやはり怖いときは怖いですよ(笑)。それでも目の前にあったら撮りたくなってしまうのが、カメラマン魂というか、性というか。「撮りたい!」という気持ちが勝るから撮れるのでしょうね。近寄ってくるとディテールがどんどん出てきてよくなってきますし、ズームレンズで撮るのとはまた違う迫力ある映像を収めることができます。さきほどお話ししたように、初日は怖くて近づけなくても、3、4日間、コモドドラゴンを実際に見て生態がわかってくると、どうすればいいカットを撮ることができるのかというのもわかってくる。レンジャーたちがいざとなったら止めてくれると信頼していましたし。あと僕自身の慣れというのもあります。

Q:撮影が進むと乗ってきたような感じでしょうか?

そうですね。ただし、そこは自らを戒めなきゃいけないところです。自然だと、調子に乗ってしまうとしっぺ返しがくると僕は思っています。だからなるべく注意を払いながら迫力のあるカットを狙っていきました。レンジャーに、こういうカットを撮るにはこういう方法で大丈夫ですか、と必ず確認していました。やっぱり事故があってはならないですし、かつ迫力ある映像を求めなきゃいけない。相当緊張していたのか、現地に居るときは大丈夫でしたが、日本に戻った後、コモドドラゴンに食べられる夢を見ましたね(笑)。