特集
続々登場!秋のラインナップ
いつもこのコーナーは、担当ディレクターに登場してもらってますが、あいにく今、全員取材に出払ってまして…(笑)。
僭越ながら代わりにわたくし(河野プロデューサー)の方から今後しばらくの見所をご紹介したいと思います。
10/12放送 ゼメリング鉄道(オーストリア)
この鉄道は、19世紀半ばに建設された山岳鉄道の草分け的存在。その後の鉄道技術の発展に大きな影響を与えたことに世界遺産としての価値がありますが、それだけでなく、今を生きる私たちにも学ぶべき点が多いなと思いました。それは自然との調和。当時の蒸気機関車の馬力の限界を考慮してという部分も大きいのですが、なるべく自然の景観を壊さないようなルートがとられているんです。
そしてどうしてもやむをえないところだけトンネルを掘り、石橋を渡しているのですが、その石橋を作るにも、当時すでに鉄骨の技術はあったはずなのに、古代ローマ時代の水道橋を思わせるような、様式美のあるアーチ構造を持った形で統一している。それが非常に自然と調和した美しい景観を生み出しているんですね。
今ですと、最短ルートをとることを最優先に山がジャマならすぐトンネルを堀り、谷があれば橋をすぐ渡しちゃいますね、しかもコンクリートで。どうせ作るにも美しく作ったほうがいいですよね。その他にも知っていたようで、でもはっとさせられる、そんな発見もあります。
この鉄道が作られた時代、今でこそオーストリアはヨーロッパの内陸の国ですが、当時はとても広い領土を持っていました。そのひとつが今のイタリア、地中海に面する港町トリエステだったのですが、地中海とウィーンを直接結ぶためにこのアルプス越えの山岳鉄道は作られました。小さな発見ですが、この鉄道が作られた時代背景を知ることで、18〜20世紀にかけての激動をみせた当時のヨーロッパに興味を持つきっかけとなってくれればうれしいですね。
10/19放送 麗江旧市街(中国)
かつては雲南のお茶とチベットの馬とを交換する茶馬古道という公益ルートで栄えた町で、今でもその時の古い町並みが残っています。氷河からの雪解け水を巧みにひきこんで水路を造り、山間に豊かな水のあふれる住空間が実現されています。そうした街並みを作った一族の末裔が今でも暮らしています。景観としては昔ながらの瓦屋根が「甍の波」(いらかのなみ)と称されるほど美しく、日本人にとっても原風景的な懐かしさがあると思います。
今回特に注目しているのは、そこにくらす少数民族ナシの人々に特有の文字「トンパ文字」です。細々とナシの祭司の間で伝わってきたものですが、現地の研究所に残されている秘蔵の伝書を撮影させてもらうことができました。これが切ない悲恋物語なんですよ。
トンパ文字とは、いわゆる象形文字です。絵文字といったほうが分かり易いかもしれませんが切々と恋に破れた女性の思いが象形文字に表されているのでとても興味深いですね。このトンパ文字、現在では読める方もかなり少なくなってしまったとか。ですが、世界遺産に登録されたことで、学校を作り、子供たちに教育できるような環境が整ってきたそうです。そうやって一所懸命文化を残そうと努力している人たちがいること。そういう部分も見ていただきたいと思っています。