おやこで学ぼう救急処置!!

お子様たちや、お母さん、お父さん…家族全員で「困った…こんなときどうしよう!」と、身近に起こりうる、ちょっとしたケガや病気の応急手当を『病院で念仏を唱えないでください』の医療監修チームに教えていただくコーナーです

【第8回】もうすぐレジャーの季節!
川辺や海辺で溺れている人がいる!
どうしよう?

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川や海で溺れている人を見つけたらどう対処したら良いでしょうか?
溺れた人が救助されてから行うべき救急処置についてお話しします。

1川辺や海辺で溺れた人を見かけたとき、反応が無かった場合どう対処するべきでしょうか。

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川や海で溺れることを溺水といいます。
溺水は、水を飲むことによる窒息状態となり致死的となる危険な状態です。溺れた人が救助されてきたら、呼吸、循環、意識の確認を行います
反応がなく、呼吸をしていなければ心肺停止と考えて心肺蘇生を行わなければなりません。これは以前にお話ししましたね。溺水でも同様です。先に述べたように、溺水は水の中で呼吸をすることができず、低酸素の状態となることから心停止にいたります
よって溺れた人が引き上げられたときには心停止しているのではないか、という意識で様子を観察する必要があります。

もし反応がなければ、周りにいる人にAEDをもって来てもらいましょう。そして同時に119番通報をします(救助隊がいたら救急隊が来ているかもしれませんね)。その後直ちに呼吸をしているかを確認し、呼吸をしていなければ胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始します。要領は以前お話ししたのと同様です。ここで溺水の時の注意点です。AEDがもし到着したらAEDを装着します。
ただ、溺水者はびしょ濡れですのでそのままAEDをはると電気ショックの効果が十分に得られないことがあります
濡れた体にそのままパッドを貼ると、体の表面の水を通して電気が逃げてしまい、心臓に十分な電気を流すことができない場合もあります。そのため、ぬれた部分をタオルなどで拭き取ってからAEDのパッドを貼るようにしましょう
AEDの機種によってはセットの中に水分を拭き取る専用の布が入っているものあります。

2溺れた人が水を吐いたらどうしたら良いでしょうか。

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溺水後に救助された人が何らかの反応がある、または呼吸をしている場合は、心肺停止ではないことがわかります。
心肺停止をしていなくても意識がなければ、その後に心停止となることもありますので、すぐに救急車で医療機関を受診すべきです。
救急車が到着するまでは、溺れた人特有の注意点として、水を吐かないかを注意をすることです。
溺水のあとは人工呼吸などをきっかけに水を吐くことがあります。この場合は、吐いた水で気道(空気の通り道)をふさいでしまうと窒息してしまうため、顔を横に向けて吐いた水を口の中から流し出すことが必要です。

3溺れた際に注意すべき二次災害にはどのようなことがあるでしょうか。

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溺れた人に救急処置をするときに自分を守るための注意点も知っておきたいですね。
溺水者の救助を行う場合は、まず自分のいるところが安全であることを確認して下さい。救助活動をしている最中に自分も巻き込まれる、または溺れるなどの危険がある場合は、安全なところまで移動しなければなりません。
自分の安全を守ることは、救助者を助けることにつながります。
逆に自分が危険になれば、救助者を助けられないことにもなるので、自分の安全を確保することは第一ですね。

溺れた人が心肺停止となっている場合は、心肺蘇生を行う必要がありますが、この際に人工呼吸をする必要があります。
人工呼吸は実施できれば良いですが、この処置をすることで自分が感染してしまう危険性もないわけではありません。
特に嘔吐物や出血がある場合は感染のリスクは高くなります
こうした場合は、人工呼吸を避けて胸骨圧迫をしっかりと行うのは許容されるということは以前にもお話ししましたね。救助することで感染の危険性がないかも考えておく必要がありますね。

写真:渡部 広明

【 医療監修 】

島根大学医学部附属病院 高度外傷センター
Acute Care Surgery講座 教授
高度外傷センター センター長
渡部 広明

専門分野:Acute Care Surgery(外傷外科、救急外科)、外傷学、災害医学、救急医学、病院前診療学、集中治療学

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