おやこで学ぼう救急処置!!

お子様たちや、お母さん、お父さん…家族全員で「困った…こんなときどうしよう!」と、身近に起こりうる、ちょっとしたケガや病気の応急手当を『病院で念仏を唱えないでください』の医療監修チームに教えていただくコーナーです

【第7回】もうすぐ暖かい季節がやってくる!
熱中症対策って何をすればいいの?

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これから少しずつ暖かくなっていきますが、すぐに夏もやってきます。
酷暑となると増えてくるのが、「熱中症」です。本日は熱中症についてです。

1熱中症とはどのような症状のことを指すのでしょうか。

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熱中症とは、熱い環境下にいたり、そうした環境にいたあとに起こる体調不良全般を指す病態です。
要は、熱暑環境にいたことで生じる身体の異常の総称です。人間の体は、体内で発生する熱産生と放散バランスをうまくとって体を保っています。
しかし、高温環境に長時間さらされると、この熱のバランスを保つことができなくなり、熱が体にたまった状態となってしまうことがあります。
熱くなると汗をかくのは、このたまった熱を放散させて体の体温を調整しているのですが、ひどくなってくると汗をかかなくなり、熱放散ができなくなり体に熱がたまってしまうことになります。つまり、高熱環境にいるにもかかわらず、汗をかかなくなったと言うことは危険な徴候だと言うことですね。
熱中症は熱いところにいたときに起こることがほとんどですが、気温が低くても湿度が極度に高い場合にも起こりうるので注意が必要です。

熱中症は軽いものから、命に関わる重篤なものまで様々に分類されます。日本では現在、熱中症は重症度によって3つに分類されています。
Ⅰ度(軽症):
めまいや立ちくらみ、大量の発汗などが見られ、筋肉痛などがみられることもあります。通常は涼しいところなどで休むことで良くなるレベルです。
Ⅱ度(中等症):
I度の症状に加えて、頭痛や吐きけ、体のだるさや集中力の低下が見られるようになりますが、多くは意識は保たれています。
Ⅲ度(重症):

熱中症の最重症のもので、中枢神経障害(意識障害など)が見られたり、臓器の障害が起こります。
特に中枢神経の症状として、意識がもうろうとする、ふらつき、けいれんなどが見られます。Ⅲ度は治療が遅れると命に関わることがあります。

2熱中症になってしまった時どのように対処すればよいのでしょうか。

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熱中症だと感じたら、なるべく早くに風通しの良い涼しいところで休むようにしましょう
できれば日陰や冷房が効いている部屋に移動する方が良いです。着ている衣服が厚ければ脱がせて熱を放散させるようにします。できれば冷たい水分やスポーツドリンクなどを飲ませます。何か体を冷やすことのできるものがあれば使いましょう。
うちわで扇いだり扇風機を使うのは良い方法です。熱中症の重症化を防ぐには、なるべく早く体温を下げることとされていますので、体温を下げる対応はなるべく早く始めた方が良いです。

先ずは上記のような対応をしますが、この中でⅡ度以上の症状が出ている場合はすぐに医療機関を受診すべき状態です。特に意識が薄れてきた、暑いのに汗をかいていない、などは重篤な状態ですので救急車を呼ぶ方が良いでしょう

3炎天下で活動する際に出来る熱中症対策にはどのようなものがあるでしょうか。(屋外対策)

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熱中症は予防することで多くは防げます。体育館で扉を閉め切ってスポーツをやるなど閉鎖空間での活動は避けるべきです。
熱中症を起こす環境の特徴としては、気温、湿度、日差し、風通しなどが大きく関わっています。
高温多湿で風の吹かない直射日光の環境は最も危険といえます。高温環境で活動する場合は、窓を開けなるべく風通しが良い環境を作るのが良いですね。また通気性の良い衣類を着用するなども防止対策になります。のどが渇く場合は、極力水分を摂取するようにしましょう。高温注意報などが気象庁から出ている場合は、激しい運動は中止する判断も必要でしょう。

4日々生活する中で出来る熱中症対策にはどのようなものがあるでしょうか。(室内対策)

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運動だけではなく屋内で過ごす場合も工夫が必要です。運動していないので熱中症にならないというのは誤りです。
真夏の暑い中、締め切った部屋に長時間寝ているだけでも熱中症になることは少なくありません。
部屋で休む場合も、窓をあけて風通しをよくする、もしくは締め切って冷房をかけるなどの対策は必ず行う方が良いですね。高齢の方や乳幼児は脱水になりやすいですから、室内環境を整えることは大切な対策となります。

最近では環境省などが「暑さ指数」を発表して熱中症の発生リスクを評価しています。
携帯のアプリなどを利用すると、こうした情報を得ることができますので、その地域の熱中症発生リスクを知ることができます。
こうした情報も十分に活用して熱中症対策をすると良いですね。

写真:渡部 広明

【 医療監修 】

島根大学医学部附属病院 高度外傷センター
Acute Care Surgery講座 教授
高度外傷センター センター長
渡部 広明

専門分野:Acute Care Surgery(外傷外科、救急外科)、外傷学、災害医学、救急医学、病院前診療学、集中治療学

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