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パナソニックドラマシアター水戸黄門 40周年第40部記念 スペシャルコンテンツ



うずまさ通信

/撮影所で働く、こだわりの職人さんたちをご紹介します

File.6【筆文字(ふでもじ)】

宇野 龍之介(うの りゅうのすけ)さん

手紙に看板、暖簾(のれん)、提灯(ちょうちん)…。番組でよく使われるそれら小道具に書かれている文字は、ベテランの美術スタッフによるもの。その人、宇野龍之介さんは何百人いや何千人もの筆跡をスラスラと書き分ける、恐るべき職人技の持ち主なのです。
そこで「黄門いろはがるた」コーナーでおなじみの神先さんと宇野さんの仕事場を訪ねました。
このお仕事に就いた経緯は?
宇野:
もともと私の親父が、セットで使う絵や文字を書いていたんです。
私は美術学校を卒業して、その親父の助手をしたのがきかっけ。当時は映画全盛期で、ここで親父の絵を手伝いながら、家では映画のタイトル文字も書いていました。
それから正式に東映太秦映像のスタッフになって、30年ほど前からは筆文字の専任でやってます。
↓左が宇野さん、右が神先さん

神先:
世の中に絵描きさんはいっぱいいるけど、この仕事はスピードが要求されるから普通の絵描きさんでは務まらない。
その点、お父さんは注文された襖絵や障壁画を一晩で仕上げてしまう、本当に速かった。
筆文字も見事で、初期の『水戸黄門』のスタッフロールの人名は全部、宇野さんのお父さんによる手書きでした。
ふだんの仕事の流れは?
宇野:
助監督が原稿を持ってきて、そのシチュエーションを説明してくれるんです。
「楷書(かいしょ)で」とか、「読めないくらいの崩し文字で」とか注文があった場合はそのように書く、という具合で、作業の流れは極めて単純ですよ。
神先:
でも、例えば手紙なんかで現代言葉の原稿が来たら、全部、江戸時代の表現に直さないといけないから大変でしょう?
宇野:
昔はそういうこともあったけど、最近は助監督がかなり熱心に調べてくれてあるから、そんなに苦労することはないですね。
ただ、昔の字は今は使われていないから、ふだんから江戸時代の書物などの資料をよく見ています。辞書は必ずそばに置いておいて、何度も何度も調べてね。誰も教えてくれないから、ほかに覚える手立てはないんですよ。
画面に一瞬しか映らなくても、手紙の文字って意外と目立つから、適当なことは書けないんです。
大勢の筆跡をどうやって書き分ける?
宇野:
武士とか商人とか、役の設定を手がかりに想像を働かせかり、逆にパッとひらめいた字で。
あと、ふだん少しでも変わった字を見たら、自分の中のストックにしています。
スピードが要求される仕事だから、とにかく文字をたくさん見て書体の蓄えを増やさないとね。

神先:
でも女性文字を書くのは難しいでしょう?
宇野:
女性文字、男性文字っていう区別は特にないんです。
女性でも力強い字を書いたり、男性でも頼りない字を書く人はいっぱいいますから。
それよりやっぱり、個々のキャラクターが重要ですね。
黄門様が書く字体はいつも一緒?
宇野:
演じる役者さんは変わっても、水戸光圀という人間は変わらないから字体は統一してきたつもりです。
神先:
黄門様が文字を書くシーンの手元の撮影は、代わりに宇野さんが演じることもあるんだよね。
宇野:
あれは、ほんま苦手。閉口やわぁ(笑)。何度やっても慣れません。
本番で「よーい、スタート」って言われるたびに、自分でも情けないくらい緊張してしまうんです。
このお仕事で、ほかに難しいことは?
宇野:
歌舞伎で俳優さんの名前を書く時の「勘亭流」という書体。
私にとって一番の難物です。あれを書いて欲しいと言われると、とにかく参考書と首っ引きになります。
紙以外にも、木とか布とかいろんなものに書くんですよね?
宇野:
ええ。
ラワンのような洋材を使った看板に書く時は、墨だけだとにじんでしまうからビニール塗料を少し混ぜて書いたりね。
暖簾は、書き味を生かしたい時は麻なんかに直に書くし、そうじゃない時は紙に書いて、それを布にプリントしたり。
神先:
フィルム時代と違って今は映像が細部まで鮮明に映るから、特にアップの時なんかは木材や布もいいものを使わなと、文字にまで影響してくるからね。
『水戸黄門』以外にも東映太秦の作品をすべてお一人で?

宇野:
父が亡くなってからずっとひとりでやってきましたが、最近、若いスタッフが入ってくれたんですよ。
こういうゴチャゴチャした部屋で汚れながらも頑張ってくれてるから、本当に大助かりです。
神先:
最近は、助監督やデザイナーにも若い人たちが来てくれてうれしいですね。
特に女性パワーが目立つ。我々も期待しています!
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