特定の民族や国籍の人たちへの差別をあおるヘイトスピーチ。全国で3年半の間に1152件確認されている。在日韓国人3世の崔江以子(チェ カンイヂャ)さんは、去年11月、初めてヘイトスピーチデモの現場で抗議の声をあげた。崔さんが生まれ育った川崎市は、ヘイトスピーチデモの標的とされ、デモ隊は、住宅街にまで入ろうとしていた。 川崎市・桜本には、戦前から多くの在日韓国・朝鮮人が暮らす。長い時間をかけて、民族や国籍などの違いを豊かさととらえ、互いを尊重し合って生きてきた地域だ。今や、フィリピン、ベトナム、ブラジル、中国など様々な国をルーツに持つ人たちが暮らす。崔さんは、多文化共生の街づくりに20年以上にわたって携わってきた。 日本人の夫との間に生まれた、崔さんの中学2年生の息子・寧生(ねお)君は、韓国と日本、ダブルのルーツを持つことを誇りに思っている。民族や国籍などの違いを理由に、「死ね」「殺せ」などという言葉を発するヘイトスピーチは、寧生君にとって、今までの生活の中で一番嫌な出来事だった。「大人だから話せばわかってくれる」と信じ、「差別はやめて共に生きよう」と声を上げ続けてきた。そして、崔さんも、自身も傷つき、息子や在日1世のハルモニ(おばあちゃん)たちが傷つく姿を目の当たりにしながらも、声を上げ続けてきた。 今年5月。ヘイトスピーチ対策法が成立した。崔さんたち、被害当事者や地域の人たちの訴えが国に届いたのだ。しかし、対策法の施行直後の6月5日に、ヘイトスピーチデモが再び予告された。法施行後、初めてのヘイトスピーチデモは、どうなったのか。崔さん、寧生君たちが発し続けている「共に生きよう」という言葉の意味は。
取材・撮影・編集:
「ヘイトスピーチ取材団」(TBSテレビ報道局) |
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