兵庫県朝来市生野町にある私立、生野学園高校。卒業式では、2枚の卒業証書が授与される。1枚は、学園生活での生徒の記録を記した、生徒ごとに異なる内容だ。そして、卒業生一人一人が答辞を述べ、語る。学校のこと、家族のこと、同級生のこと・・。さながらカミングアウト大会の様相だ。 生野学園は、不登校を経験した生徒が、全寮制で学ぶ学校だ。天空の城として人気の竹田城に近く、かつて生野銀山で栄えた自然豊かな場所に1989年開校、700人を超える卒業生を送り出してきた。 不登校の理由は、生徒の数だけある。不登校だった期間も生徒によってさまざま。だから生野学園の授業は一律ではない。生徒ごとのプログラムで進められる。 寮生活を中心とした共同生活や、学校行事を作っていく中では、生徒同士の衝突もある。しかし、それこそが学校。不登校の時期には、経験のしようがないことだった。 2015年は、「不登校」という言葉が生まれて50年。つまり、最近の問題ではないのだが、学校も、家庭も、行政も、問題の存在を認めず、隠してきた。だから、見えなかった。 そんな社会環境に変化が出てきた。その変化の中で、学園は今、新たな問題に直面し、岐路に立たされている。学校、生徒、卒業生、卒業生の親たちの声を通じて、不登校50年のいまを考える。
取材:岩城浩幸(TBS報道局)
構成:清重宗久(TBSプロネックス) |
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