全国の矯正施設には、およそ1800人の無期懲役囚が服役している。その殆どが生命犯、つまり殺人事件を起こし、世間を恐怖に陥れた事件の主犯で、1審判決死刑、2審で無期懲役という例も少なくない。彼らは極刑、つまり死刑を免れた受刑者だ。 無期懲役囚でも、早ければ12〜3年で仮釈放が認められ、出所していた時代があった。しかし、被害者の遺族への配慮などから、平成16年に刑法が改正され、有期刑の最高が20年から30年に引き上げられた。そして、無期懲役囚が30年の有期刑の受刑者より先に仮釈放されることは困難になった。 岡山刑務所に収容されている660人のうち、260人が無期懲役囚だ。中には90歳の高齢者もいる。74歳で収容され、仮釈放の対象になるまでにあと14年、その時には104歳となる。洗濯工場で単純作業をしているが、夜は30歳も年下の無期懲役囚と独房で生活する。同居者は“老老介護”を皮肉り“無期無期介護”と苦笑する。刑務所が“介護施設化”し、介護が刑務作業の一つとなってしまった。 塀の中の平均年齢が上昇の一途を辿り、“獄死”するケースが増える一方、岡山刑務所で支払われる刑務作業の報奨金は一般の刑務所の2倍以上、日本一賃金が高い刑務所となった。備前焼などで、達人の域に達する受刑者が出る。受刑者の布団は、熟練した技術で打ち直されるため、刑務所のイメージからは程遠い“ふかふか”。長期刑ゆえの“珍現象”も起きる。 介護や獄死の現実を目の当たりにし、“とにかく生きて社会に戻りたい”との“生”への執着が芽生えた無期懲役囚達。“救いようのない後悔の念”と“生き続けたいという執念”。ふたつの狭間で揺れ続ける“極刑を免れた男達”の現実を取材した。
制作:TBSテレビ
取材・構成:巡田忠彦(TBS報道局) |
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