![]() ![]() 4年前の春、札幌の桜の名所・円山に、車椅子に乗った萩田つかささん(当時24歳)の姿があった。ここで友人たちと花見をするのは、前年に引き続き2度目なのだが、つかささんにはその記憶がない。たった1年前の出来事も…、きのう起こった出来事ですら、そのすべてを記憶することができないのだ。 つかささんが交通事故にあったのは、その7年前、高校2年のときだった。一時、生死の境をさまよい、2か月後に目覚めたものの、左半身の自由と“記憶するチカラ”を失っていた。 絶対に忘れたくないことは、ノートに書き留めて読み返してきた。そして重い障害を負いながらも、臆することなく、車椅子で街に出かけます。 ![]() そのつかささんが、去年、結婚しました。相手は、客として乗ったタクシーの運転手の小柳雅巳(こやなぎ・まさみ)さんだ。“新たな生命”も、おなかに宿った。そして、ことし1月28日、帝王切開で、男の子を出産─。 ![]() しかし、その喜びもつかの間、意識不明になる。医師の診断は、妊婦の数万人に1人が発症するという、致死率の高い「急性妊娠脂肪肝」という病気…。そして、再び目覚めることなく、10日後に亡くなった。 ことしの5月下旬、桜前線のゴール。流氷が去った網走にも、桜が咲いた。満開の桜の下に、つかささんの息子・和実(なごみ)くんの姿があった。夫・雅巳さんに、しっかりと抱かれて。 ![]()
制作:HBC北海道放送
担当ディレクター:田中 敦 |
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