特集

2023年3月5日放送「プロセッコの丘」

人の手で守られてきた畑と農家と森のモザイク

プロセッコの丘の美しい景観を昔から変わらず守っているのは、家族が営んでいる小規模な農家なのです。

──プロセッコの丘のようなブドウ栽培は珍しいのでしょうか?

田口:複雑な地形の丘を埋め尽くすようなブドウ畑は、世界でも珍しいものです。以前、シャンパンの生産地である世界遺産「シャンパーニュ地方の丘陵とメゾンとカーヴ」の取材をしたことがあるのですが、同じ丘陵でもシャンパーニュ地方は緩やかな丘が連なっていて、大規模なワイン作りを行なっています。一方、プロセッコの丘は斜面が急で開墾に限界があります。そのため、ブドウ栽培から醸造までを行う小規模な家族経営の農家兼ワイナリーが現在でも多いのです。

──同じスパークリングワインの有名な産地でも、シャンパーニュとプルセッコの丘では大きく様子が異なるのは興味深いです。

田口:ドローンを使ってプロセッコの丘を空から撮影したのですが、上空からだと小規模なワイナリーのモザイクのようにひしめき合っている様子を見ることができました。意外だったのが、森が多いことです。封建時代、地主に借り受けた土地の森に農家は栗の木などを植えて食糧や木材、薪を得てきました。開墾しづらい地形であるがゆえに区画ごとに、ブドウ畑や醸造所のほかに現在も森が残っているのです。そうした森が土地の湿度を保ち、ブドウの質の向上に役立っているということです。

上空から見ると、ブドウ畑と農家、そして森が区画ごとにモザイクのように広がっているのがわかります。

──小規模なワイナリーが守ってきたプロセッコのスパークリングワイン、現地では飲まれましたか?

田口:はい。ワイナリーでブドウの収穫を撮影したあと、「ぜひ飲んでいってください」と声をかけていただき、試飲させてもらいました。取材したのは9月だったのですがまだ暑さが残る気候で、醸造所横の庭に置かれたテーブルでそこで働く人たちと一緒にいただいた一杯はとてもおいしかったです。

品質を高めるため、この地域の人々は競い合って開発を繰り返してきました。現在、世界遺産地域でのプロセッコの年間生産量は1億本に及んでいます。

──お話を聞いているだけで喉が渇いてきました。最後に視聴者の皆様へメッセージをお願いします。

田口:この世界遺産の取材はコロナ禍で先送りされてしまい、今回やっと現地に行けました。空撮による空から見たプロセッコも見どころなのですが、地上からの映像にもぜひ注目してください。ブドウ畑の急傾斜を感じていただけるようにアングルを工夫しながら撮りました。昔と変わらぬ手作業でブドウを栽培することで、この世界遺産の景観を守っている現地の人々の姿もぜひご覧ください。

アルプスの自然と、長年に渡る人々の開墾が生んだ「プロセッコの丘」の絶景を、お楽しみください。

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