世界遺産とは
世界遺産とは?
1959年、エジプトで農業用水などの確保のためアスワン・ハイ・ダムの建設が決定。しかし、それによって周囲にあるヌビア遺跡が水没してしまう恐れが懸念されていた。そこで、ユネスコは救済のための寄付活動を世界へ向けて発信、工事費や保存方法に関するアイディアを募集した。結果、多くの国から寄付金が集まり大規模な移築工事が実現、ヌビア遺跡内のアブシンベル宮殿は守られた。
このように、保存や保護を必要としている場所は全世界に存在するが、それら全ての国で資金や人材が十分な国は少ない。そこで『過去から引き継がれてきた地球や人類の歴史を世界中で協力し、未来へ繋げていこう』という考えの下、「世界遺産条約」が締結された。2023年現在、この条約の締約国は195カ国である。
(日本は1992年、125番目に加盟国となった)
「世界遺産条約」は、正式名「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」、その中で遺産は以下の通りに分類される。
文化遺産
顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文化的景観 など
(例:万里の長城、オリンピアの古代遺跡、京都など)
自然遺産
顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、景観、絶滅の恐れのある動植物の生息・生息地などを含む地域
(例:グレートバリアリーフ、マヌー国立公園、知床など)
複合遺産
文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えている遺産
(例:ギョレメ国立公園およびカッパドキアの岩石遺跡群、マチュピチュなど)
2023年7月の時点で、文化遺産933件、自然遺産227件、複合遺産39件。
合計1199件の世界遺産が登録されている。
危機遺産
「危機遺産」とは、エルサレムの旧市街とその城壁群やガラパゴス諸島など。これらのサイトは、地震や自然災害などの天災、紛争や戦争、環境汚染、密猟、観光地化によりもたらされる公害など人的災害により危機・危険な状態にある。このような状態になった場合「危機にさらされている世界遺産リスト」、通称「危機遺産」に登録される。登録されたサイトは、世界遺産条約締約国からの出資金、団体・個人の寄付金などで成り立つ世界遺産基金より、緊急的に支援を受け、保護や修復を行う事ができる。結果、危機的状況から回復したと判断されれば、危機遺産リストから削除されるが、逆に悪化し、普遍的な価値が失われてしまったと判断された場合は、世界遺産の登録を削除されてしまう場合もある。
負の遺産
「負の遺産」とは、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所や原爆ドーム、バーミヤン遺跡など。これらのサイトは普遍的な価値があると同時に戦争や人種差別など、人類が引き起こしてしまった過ちを証明するサイトでもある。これらは文化遺産・自然遺産・複合遺産のように、世界遺産条約の中で明確に定義付けされているわけではない。しかし、それらサイトが持つ歴史的背景などを知り守ることは、同じ過ちを二度と繰り返してはいけないという事を未来へ伝えるメッセージの役割も担っている。