特集

2022年12月4日放送「オルチャ渓谷」

都市の発展とともに開墾されたオルチャ渓谷

オルチャ渓谷の成り立ちは、そこを通る街道、そしてこの土地の支配してきた修道院や都市と深く関係していました。

──放送では田園のほかにはどんな場所が紹介されているのでしょうか?

江夏:番組では、オルチャ渓谷の歴史を振り返る場所も紹介しています。8世紀から10世紀までは修道院がオルチャ渓谷一帯を治めていました。今も畑に囲まれた土地に建っているサンタンティモ修道院もその1つです。その後、オルチャ渓谷を通る「フランチジェナ街道」に沿って発展した、いくつもの城塞都市がこの土地の開墾を進めました。フランチジェナ街道は、イギリスとローマを結ぶ中世ヨーロッパの交通の大動脈で、多くの商人や巡礼者たちが行き交う重要な道だったのです。

8世紀から10世紀までは修道院がオルチャ渓谷一帯を治めていました。サンタンティモ修道院もその1つでした。

──城塞都市とはどんな街なのでしょうか?

江夏:この地方に中世からある街の多くが防御や監視に優れた見晴らしのよい丘の上に築かれました。都市同士が領土を巡って争いを繰り返していたため、城壁で囲んで要塞化した都市もあります。サン・クイリコ・ドルチャもそうした都市の1つです。街の中心を街道が貫いていて、旅人相手の宿や商店が軒を連ねていました。そんな時代の街並みを思わせる風景も空撮を駆使してカメラに収めました。番組ではそのほかに、オルチャ渓谷の近くにある別の世界遺産、シエナもお見せします。シエナは中世に栄えた都市国家で、オルチャ渓谷の都市を支配下に収め、開墾をさらに進めたのです。

中世、フランチジェナ街道に沿って都市が発展しました。のちにそれらの都市を支配下に収めたシエナによってオルチャ渓谷の開墾がさらに進められました。

──オルチャ渓谷が現在の姿になるのに街道と都市の存在が深く関わっていたのですね。

江夏:フランチジェナ街道の一部は、今ではサイクリングやトレッキングをする人が行き交っています。この街道沿いの川にある温泉保養地も紹介しています。川の中に源泉があり、古代ローマ時代から利用されています。温泉に含まれる石灰岩が結晶化した巨大な塊がユニークです。

──古代から街道を行き交う旅人の疲れを癒してきた温泉なのかもしれませんね。最後に視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

江夏:放送では、本当に絵画のように美しい景観をたくさんお届けします。糸杉並木の前でさわさわと音を立てて風になびく麦畑は何と言っても絶景です。今回はコロナ禍での制限が緩和されて間もないタイミングの撮影となりました。皆さんも「いつか行ってみたいな」とトスカーナに思いを馳せながら観ていただければ嬉しいです。

イタリア・トスカーナを旅している気分に浸れる放送をぜひご覧ください!

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