特集

2021年12月5日放送 特集「ネムルト山」

標高2150mの山に築かれた天空のピラミッド

今回の世界遺産は、トルコ東部の高原地帯にあるネムルト山です。標高2150mのこの山の頂には、高さ約50mにもなるピラミッドがそびえています。およそ2000年前に築かれた、この天空のピラミッドとその東西に並ぶ巨大な石像について、番組を担当した石渡ディレクターに話を聞きました。

巨大な石像が並ぶ不思議なテラス

標高2150mのネムルト山は、小石を積み上げたピラミッドと巨大な石像の顔が並ぶ不思議な場所でした。

──今回の「ネムルト山」とはどんな世界遺産なのでしょうか?

石渡ディレクター(以下、石渡):ネムルト山は、トルコ東部のアナトリア高原にある、標高2150mの山です。周囲の山々の中では最も高く、その山頂にある古代遺跡が文化遺産として登録されています。麓から一見すると普通の山の頂なのですが、実際は人が小石を積み上げて作った、直径150m高さ50mの円錐形をしたピラミッドなのです。

ネムルト山の山頂には、人によって築かれた天空のピラミッドがそびえています。

──いつ誰が何のために作ったピラミッドなのでしょうか?

石渡:このピラミッドの東西には、高さ数mにもなる巨大な石像が並ぶテラスがあり、その石像の台座に刻まれていた古代の文字から、およそ2000年前にこの一帯を支配したコンマゲネ王国の国王アンティオコス1世の墓であることがわかっています。石像は台座に腰掛けた胴体だけの状態で、かつては体に載っていた頭部がその周囲にあります。地震などで崩れて落ちたと考えられていますが、巨大な顔が麓を見下ろすように並ぶ様子は不思議な光景です。

ピラミッドの東西にあるテラスには、頭が崩れ胴体のみになった石像が並んでいます。

──巨大な頭部は誰の顔なのでしょうか?

石渡:テラスにある石像は、ゼウスやヘラクレスといったギリシア神話の神々であることが古代文字からわかっています。また、王も神々の列に加わっていて、アンティオコス1世の像の頭部もあります。その列の両端には、天空を守る鷹、大地を守るライオンの像も置かれていて、このテラスは儀式を行う祭壇であったと考えられています。

石像から崩れ落ちた巨大な頭部。さまざまな神々や国王、天空と大地を守る動物の顔です。

──アンティオコス1世が支配したコンマゲネ王国とはどんな国だったのでしょうか?

石渡:実は「コンマゲネ」という名の由来もはっきりとわかっておらず、謎の多い王国なのです。番組ではネムルト山以外に、アンティオコス1世の妻や娘の墓、夏の離宮、岩山の砦など、高原地帯にあるコンマゲネ王国の遺跡も紹介して、2000年前の繁栄の様子をお伝えします。

ネムルト山の付近には、王の妻や娘の墓、夏の離宮、岩山の城砦などコンマゲネ王国が栄えた時代の遺跡が残されています。

BACK TO PAGETOP