特集

2020年11月15日放送「ガラホナイ国立公園」

島に残る火山が作った絶景

火山活動によって生まれたカナリア諸島。ラ・ゴメラ島にはその痕跡がいくつも見られます。

──ラ・ゴメラ島は火山でできた島というお話しでしたが、火山活動などは現在も見られるのでしょうか?

江夏:ラ・ゴメラ島では、現在、噴火などは見られません。ラ・ゴメラ島の隣の島、テネリフェ島にある標高3718mのテイデ山は別の世界遺産で、大西洋で一番高い火山です。こちらは今も火山ガスを吹き続けています。ただ、ラ・ゴメラ島にも火山活動の証がいくつも見られます。例えば、山の上の森にいくつもそそり立っている巨大な岩です。これは、かつてのマグマの吹き出し口で、長い年月で侵食されて硬い部分だけが残って、今のような景色になりました。

カナリア諸島のもう一つの世界遺産、テネリフェ島のテイデ山。標高は3718mあり、大西洋で一番高い火山です。

──鬱蒼とした森の中にそそり立つ巨岩とは不思議な景色ですね。

江夏:島の北部の海岸にも、火山によって作られた実に不思議な景色があります。幅200mにわたって膨大な量の石の柱がそそり立つ断崖です。火山から流れ出た溶岩が、ゆっくりと冷えて固まる際に、柱のような割れ目ができる「柱状節理」と言われるものです。その壮大な様子を連想させるということで、この岸壁は、スペイン語でパイプオルガンを意味する「ロス・オルガノス」と呼ばれています。

ガラホナイ国立公園の森の中にそそり立つ巨大な岩。かつてのマグマの噴き出し口です。

──200mもの柱状節理とは見応えがありそうです。ところで、麓は乾燥して岩だらけということでしたが、ラ・ゴメラ島には人は住んでいるのでしょうか?

江夏:約2万人が暮らしています。乾燥した土地での人間の暮らしと、山の上の森の関わりについても番組ではお伝えします。山の上の森で雲が水滴となり、それが集まり流れとなってやがて谷から麓に水をもたらしているのです。麓には、バナナの農場があるのですが、バナナは水を大量に必要とする作物です。それほど山には水が豊かにあるということなのです。

「パイプオルガン」と呼ばれる、柱状の岩が並んだ断崖。マグマが冷えて固まる際に出来上がる不思議な岩です。

──世界遺産の森が貯水タンクのような役割を果たしているとは興味深いですね。最後に視聴者へのメッセージをお願いします。

江夏:実は今回、新型コロナウイルスの影響で渡航制限があったため、私自身は現地に行けませんでした。そのため、撮影は現地のスタッフに依頼し、私は日本からディレクションをして番組を作りました。技術スタッフもコーディネーターもカナリア諸島在住で、ガラホナイ国立公園に精通していて、またカメラマンは自然ドキュメンタリーを専門に撮影を行っている者が担当しました。綿密に連絡を取り、彼らの経験とノウハウを駆使して最高の映像を追求しました。その結果、貴重ですばらしい映像をふんだんに番組に収めることができました。そんな新しいスタイルで作った番組をぜひお楽しみください。

ラ・ゴメラ島では、森から流れ出てきた水を活かして人々は暮らしてきました。島ではバナナなどの農園が見られます。

現地のスタッフと協力し、さまざまな絶景を収めた「ガラホナイ国立公園」をぜひご覧ください。

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