特集

2020年3月1日「ニューカレドニアのラグーン」

幻の大陸が起源となった ニューカレドニアの生き物

独特な環境を持つニューカレドニア。いったいなぜ、ここだけにそうした環境があるのか。その秘密の元は太古の大陸移動にまで遡ります。

──ラグーンや奇岩など、ニューカレドニアは本当にユニークな地形を持った島なのですね。

日下:地形だけでなく、生き物も独自なものが多数生息しています。例えば、ニューカレドニアの固有書で、カグーという鳥がいます。飛ばない鳥なのですが、それはニューカレドニアに天敵となる動物がいなかったため、飛ぶ必要がなかったと考えられています。また植物でも、南洋杉が独自の進化を遂げています。南洋杉の葉は、太古は恐竜も食べていたとされています。それが、ニューカレドニアでは食べる動物がいなくなったため、トゲがない大きなウロコのような形に進化したということです。

天敵がいなかったため、飛ばないように進化した鳥、カグー。ニューカレドニアの固有種です。

──そのような独特の進化が起こったのには理由があるのでしょうか?

日下:それはニューカレドニアの島々の成り立ちに秘密があります。およそ8500万年前に、現在のオーストラリアの元となったゴンドワナ大陸から分離してできた「ジーランディア」という“幻の大陸”がありました。ジーランディアは、その後の地殻変動により約2500万年前には、ほとんどが海の下に沈んでしまったのです。ニューカレドニアやニュージーランドはその沈まなかった部分ということです。ニューカレドニアに固有種が多いのは、ゴンドワナ大陸から分離したため、その時代の生物が独自の進化を遂げたと考えられています。

ニューカレドニアの南洋杉。恐竜が餌にしていたのが、ニューカレドニアでは食べられることがなくなったため、独自の進化を遂げてトゲのない柔らかい葉を持つようになっています。

──海に沈んだ幻の大陸とは、ミステリアスですね。

日下:ニューカレドニアの海には、さらに古い歴史を持つ神秘的な生物も生息しています。5億年前から姿を変えずに生き残っているオーム貝です。ニューカレドニアの海の環境変化が少なく、ずっと餌があったのと、一方で天敵がいなかったのが、進化しなかった理由と考えられています。まさに「生きた化石」です。番組では、ニューカレドニアの固有種であるオーム貝をお見せします。生まれて1週間ほどの赤ちゃんオーム貝もご紹介しますのでご覧ください。

5億年前の姿のままの「生きた化石」オーム貝。生後1週間ほどのオーム貝の子どもの映像もお届けします。

──生きた化石までいるなんて、ニューカレドニアには、本当に多様で豊かな自然が残されているのですね。

日下:ウベア島の北部には、サメが交尾し、生まれ育ち、外の海に出て、また繁殖期に戻ってくるという入江があります。現地のガイドの案内で、海に胸まで浸かりながら浅瀬を進まないとたどり着けない場所なのですが、そこは島の人々が「明日の命」と呼ぶ、サメの聖地なのです。島には、サメを傷つけると不幸が起こり、逆にサメを敬うと病気が治るという先祖からの言い伝えがあるのです。島の人々はその言い伝えを守るのと同時に、自然を保護して、子孫へ残し伝えることを大事にしています。

島の人が保護している、サメの聖地である入り江。サメはここで繁殖し、生まれた稚魚は体長が1メートルほどになるまでここで育ち、その後、外の海で出ていき、また繁殖しに戻ってくるのです。

──サメにそんな生態があるとは知りませんでした。島の人々が言い伝えを通じてその環境を保護し続けているのは、とても興味深いです。最後に視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

日下:最初にも少し話しましたが、「白いビーチに青い海」だけではなく、奇岩の風景や赤い大地、森や海に住む生物など、ニューカレドニアの多様な部分をお伝えしたいと思い、さまざまな映像を撮ってきました。皆さんが知らなかったニューカレドニアを感じてください。

独特な環境を保ち、多様な生物が暮らすニューカレドニアの姿をお楽しみください。

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