特集

2020年1月12日「白神山地」

かつては海底だったブナの森

広大なブナ林と険しい山々が連なる白神山地。それらができたのは、今も隆起し続ける大地に理由がありました。

──どうして、この土地にブナ林ができたのでしょうか?

三浦:白神山地の誕生の秘密はその土地にあります。海底火山の噴火でできた柔らかい堆積岩が隆起によって持ち上げられたのが、白神山地といえます。白神山地の沢で、貝の化石を見ることができます。そこがかつては海の底だった証拠です。岩が柔らかく、崩れやすいため、深い谷と多くの滝が形成されました。ブナは、こうした岩が崩れた土壌で育つのに適した木だったのです。

かつては海底だった土地が隆起してできた白神山地。その証拠に貝の化石が見つかります。

──ブナ林が残る条件が整っていたのですね。

三浦:白神山地のブナ林は8000年前からあったそうです。ブナの木の寿命はおよそ200年で、世代交代を繰り返して森を保ってきたのです。森の中では、寿命だけでなく、クマゲラがブナに掘った巣の跡のために、幹が空洞化してしまって倒れる木もあります。倒れた木は、森の栄養となり、次の世代のブナへ命を繋いでいるのです。山自体が1つの大きな生命のような存在に感じました。

倒れたブナの木は、森の栄養となります。こうした世代交代によって、白神山地は保たれています。

──そのように感じるのは、四季を通じて白神山地と向かい合ってきた三浦ディレクターだからこその感覚ですね。1年間さまざまな景色を撮影してきた上で、改めて今回の見どころを教えてください。

三浦:白神山地の中心にある、広さ1万ヘクタールの核心地域は、保護のために人の立ち入りが禁止されていて、地上からの撮影はできません。そこで今回はヘリとドローンによる空撮を駆使して、上空から白神山地の山そのものに迫っています。特にヘリでの撮影は、高性能なカメラ安定器を搭載した機体と4Kカメラを使用することで、美しい映像を収めることができました。この空撮で、他では見たことがないほどブナが密生している核心地域の様子を捉えています。もう1つ注目していただきたいのは、青森を代表する山、岩木山越しの白神山地です。白神山地では雲がかかることが多いため、1週間ほど待機してやっと晴れた日に撮った貴重な映像です。最初は白神山地だけを撮ろうとしたところ、飛んでみたらあまりに岩木山も美しいので、一緒にカメラに収めました。火山である岩木山と隆起によってできた白神山地の対比が面白い映像を堪能ください。

核心地域の手付かずのブナ林では、木々が隙間なく密集して生えています。

岩木山越しの白神山地。晴れることが少ないため、貴重な映像です。

──最後に視聴者の皆さまへメッセージをお願いします。

三浦:山間に広がる雲海や、夕日に照らされて赤く染まる山々など、長期間にわたる取材で収めた映像の中から、特に美しい白神山地の姿をお届けしますので、ぜひご覧ください。

岩木山越しの白神山地。晴れることが少ないため、貴重な映像です。

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