特集

2020年1月12日「白神山地」

1年かけて捉えた四季折々の絶景

今回ご紹介するのは、日本で最初に登録された世界遺産「白神山地」。青森、秋田の2県にまたがる、この自然遺産には、世界最大規模のブナの原生林が広がっています。そんな白神山地を1年にわたって取材してきた三浦ディレクターにお話を伺いました。

世界に類を見ない手付かずの広大なブナの森

白神山地の姿を捉えるために、四季を通じての取材を敢行。いったいどんな景色が見られたのか。季節ごとに移り変わる自然をご紹介します。

──まずは今回の世界遺産「白神山地」について教えてください。

三浦ディレクター(以下、三浦):日本で最初に登録された自然遺産の中の1つです。秋田県北西部と青森県南西部にまたがる約13万ヘクタール、東京ドーム2万7660個もの広さを持つ山地で、そのうち1万7000ヘクタールが世界遺産の対象エリアです。その登録理由は、人の影響をほとんど受けていないブナが世界でも類を見ない規模で分布していることです。ブナはかつて北日本に広く分布していたのですが、杉などの実用的な木に植え替えるために切られてしまい、大規模なブナ林はこの白神山地に残されるのみなのです。

──非常に貴重な自然が残されている場所なのですね。白神山地はこれまでも番組で何度か取り上げられていますが、過去の回と今回との違いは?

三浦:今回は、白神山地を番組として初めて4Kで撮影しようということになりました(※HDに変換して放送)。さらに単に1つの時期に撮影するのではなく、1年間をかけて四季折々の白神山地を撮影することにしたのです。

冬の白神山地。どこまでも広がるブナの樹氷林の絶景は必見です。

──1年を通じてというのは大変な取材ですね。撮影は、どの季節から始まったのでしょうか?

三浦:1年前の冬から白神岳の山頂に登り冬景色を撮り始めようとしたのですが、豪雪に阻まれてしまい登頂を断念せざるを得ないということもありました。そこで白神山地の冬の終わりである5月からまだ雪がたっぷりと残る山を撮影するところから始まりました。

春になり、雪が溶けて水となって流れ出すと、動物たちも動き出します。

──冬から春の移り変わりから撮影が始まったということですね。

三浦:はい。この撮影の時には雪崩をカメラに収めることもできました。春になり日差しが当たり始めると、温められたブナの表皮の熱が、根元の雪を溶かしていきます。その雪解け水が集まり、沢を流れ、やがて滝となります。番組では春の訪れとともに動き出す白神山地の動物たちもご紹介します。雪解けのあと、梅雨に入り雨が降るとブナの枝葉から集まった水が幹の表面を流れ、また根元へと集まります。ブナの根元に蓄えられた水が夏には発散され雲ができ、その雲がまた雨をもたらします。たくさんの水を蓄えるブナを中心として、白神山地では水が地と天を循環しているのです。

白神山地にある湖の1つ、青池。夏も白神山地の水量は豊富です。

──森があるだけでなく、水が豊かということが白神山地の特徴なのですね。

三浦:そうなのです。そのため、白神山地は天然の水がめと呼ばれています。世界遺産地域だけではなくその周辺にも多くの沢や滝、湖があります。番組では、実は33個あるのに「十二湖」と呼ばれる湖の1つである「青池」をご紹介します。文字通り、不思議な青い水を湛えた湖です。また、白神山地を代表する「暗門の滝」の、険しい山を流れ落ちる様子をワンカットで捉えた映像もお見せします。水がめというだけあって、夏から秋にかけても、水の流れが豊富なのです。紅葉の時期は短いのですが、そのタイミングで撮影した実に美しい色とりどりな山の景色もしっかりお見せします。

──やはり東北の秋は短いのですね。貴重な映像が楽しみです。

三浦:先日、初冬にブナの樹氷の撮影もして、これで季節を一周した撮影が完了しました。冬の映像で見ていただきたいのは、白神山地の沖合の日本海沖の様子です。沖合で対馬暖流と、白神山地から流れ出した冷たい水を含む海流が混じり合うことなく流れていて、潮目と呼ばれる境界線が出来ています。のです。この暖流によって発生した水蒸気がドカ雪を山に降らせると、ブナ林は氷と雪に覆われる冬を迎え、また春を待ちます。

秋の白神山地は、見事な紅葉を見せてくれます。短い期間を狙って撮影を行いました。

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