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2019年11月24日「ピコ島のブドウ園の景観」

火山とともに生きるピコ島の暮らし

ピコ島の独特なブドウ栽培が生まれたのは、島を作り出した火山と密接に繋がっています。火山と島での暮らしの関係をご紹介します。

──ピコ島で、このような独特なブドウ栽培が行われるようになったのはなぜなのでしょうか?

小澤:それは、ピコ島の地質と歴史が深く関わっています。ピコ島は、18世紀まで噴火を繰り返していた火山島で、島全体が溶岩でできています。ブドウ園がある海岸沿いも、もとは溶岩が冷えて固まった黒い岩ばかりの不毛な土地でした。

ピコ島の海岸はほとんど黒い岩。噴火で流れてきた溶岩が固まったもので、砂や土がありません。かつては島全体が不毛な大地でした。

──そんな土地にブドウを植えようとしたのですね。

小澤:溶岩の土地で唯一育った作物がブドウの木だったのです。15世紀に発見されたピコ島へ、最初にブドウの木を持ち込んだのはキリスト教の修道士でした。以来、500年に渡ってブドウ栽培を行ってきました。ブドウの木は岩の割れ目に根を張って、溶岩からミネラルを吸収して、ワインに適したブドウを実らせるのです。ブドウを守り温める石垣の材料も溶岩です。長年に渡って人の手で1つ1つ積み上げて作り、今も補修しながら使い続けているのです。

農家の人々は、今も溶岩を手で積み上げて補修しています。溶岩は、石垣だけでなく島の建物のさまざま部分で材料に使われています。

──溶岩がピコ島の独特なブドウ栽培と結びついているのがよくわかりました。

小澤:ブドウ園だけでなく、島の建物の材料にも溶岩が活用されているなど、ピコ島の暮らしと溶岩は切っても切れないつながりがあります。取材では、その源である火山、ピコ山に登りました。標高2351メートルで、カルデラとその中に尖った頂を持ち、美しい姿をした山です。山頂にある岩の割れ目からはマグマに温められた水蒸気が噴き出していて、今も活動が続いていることがわかります。

ピコ山は標高2351メートルで、ポルトガルの最高峰。カルデラとその中に尖った頂を持つ火山です。

──火山とともに生きる島なのですね。ところで、そんなピコ島で作られたワインは、どんな味かがやはり気になります。島では実際にワインは飲みましたか?

小澤:はい、もちろん。さきほど話したようにミネラルが豊富なブドウから作られるので、苦味や酸味がしっかりあり厚みのある味のワインでした。島での食事はやはり海産物が多く、タコやラパ貝のガーリックソテーなどといった、濃い味の料理がワインとよく合いましたね。

ワインを試飲できる醸造所や、ラパ貝などの新鮮なシーフードと一緒にワインを楽しめるお店などが島にはあり、多くの観光客を惹きつけています。

──聞いているだけで美味しそうで、ピコ島へ行きたくなってきました。最後に改めて番組の見どころを教えてください。

小澤:一番の見どころはやはり、見事な石垣です。ドローンを駆使した空撮で、広大なブドウ園に張り巡らされた石垣を捉えています。あと、今回9月のブドウの収穫時期に取材できたので、実際のその様子を収めた映像も見どころの1つです。ピコ島のブドウは熟すのが早い分収穫の時期も短く、その限られた時間の中でブドウ農家の人たちはお互いに助け合って収穫作業をします。そうした、500年かけて培ってきたブドウ栽培のいまの姿を映像に収めることができたのは幸運でした。ぜひご覧ください。

島では、収穫などの作業をブドウ農家同士で助け合う習わしが古くからあります。その習慣は、ピコ島のブドウ栽培を今も支えています。

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