特集

2019年7月14日「パーヌルル国立公園」

雲海が広がる 奇岩の山

岩と長年の雨風が生み出した パーヌルルの別の景色

縞模様の奇岩があるバングルバングル山脈の南と、反対の北側では大きく地形が異なり、高低差300mを超える絶壁に挟まれた谷が何本も通る山々があります。また山脈の真ん中付近では、乾季にも水が残る川とそこに生き抜く生命をご紹介します。

──縞模様の奇岩はバングルバングル山脈の南側に連なっているということでしたが、山脈のほかのところはどうなっているのでしょうか?

柳沢:バングルバングル山脈の北側には、南側とはまったく異なる風景が広がっていて、300m級の断崖に挟まれた深い峡谷があります。なぜ南北で、これほど異なる地形になったのかというと、先ほどの、南側の奇岩の成り立ちの中で出てきた川の話とつながります。太古のパーヌルルには、北にあった高い山から川が流れていたのです。先ほどお話ししたように、河口には細かな砂が堆積した一方で、流れが速い上流では大きな石が積もりました。雨や風によって、大きな石でできた北側は崩落し、深い谷になったのです。

バングルバングル山脈の北側は一見するとひとかたまりの岩山のようですが、縦に通る筋が切り通った峡谷になっています。

峡谷の幅は狭いところでは、数メートル。両側に切り立った断崖が迫ってきて恐ろしく感じるほどです。

──山脈の北側の岩には縞模様もないのは、川の上流だったからなのですね。それにしても300mの断崖とはかなり深い谷ですね。

柳沢:はい、あまりに深く、また幅が狭いため、太陽の光が谷底に差し込むのは、昼前の数十分だけという場所もあります。ここに生えているヤシの木は、光を求めて谷底から高さ20m以上にまで成長しています。またロック・フィグと呼ばれるイチジクの仲間は、断崖の上から水分を求めて長く根を下に成長させています。岩肌に根が張り付いたようにして生える不思議な植物です。

峡谷に生えたヤシの木は光を求めて高く成長。一方、ロック・フィグは、断崖の上から水分を求めて根を下へ長く伸ばしています。

──厳しい環境に適応しているのですね。

柳沢:一見荒涼とした風景のパーヌルル国立公園ですが、その中で生き抜く生物もいます。バングルバングル山脈の南と北の間にある峡谷には、乾期でも水が残っているのですが、そうした水のある場所には、魚や爬虫類なども住んでいます。またユニークなのが縞模様の奇岩の斜面にある、テングシロアリの蟻塚です。食糧となる植物を求めて岩の上から縦に長く伸びた蟻塚を築いています。そうした生物を番組でもご紹介しています。

バングルバングル山脈には、乾季でも水が残っている川があり、そうした環境で暮らす魚や爬虫類がいます。

──ユニークなさまざまな大自然の映像が見られるパーヌルル国立公園の放送、楽しみです。最後に視聴者の皆さんへ、メッセージをお願いします。

柳沢:連なる奇岩の縞模様は、まるで誰かが塗ったかのような本当に不思議な風景です。またカテドラル・ゴージと呼ばれる、雨季の水の流れが岩壁を削ってできたドームのような空間もお見せします。そのほかに、文明から遠く離れた土地なので、人工の光もなく、大気が澄んでいるので星空が驚くほど美しかったのが印象に残っています。そうした映像も番組ではお届けします。オーストラリア最後の秘境と呼ばれる、見たことのない美しい風景を楽しんでください。

放送では、奇岩群以外にも、自然が作った岩のドーム、カテドラル・ゴージをはじめ、パーヌルル国立公園の実に多様な風景の映像がお楽しみいただけます。

BACK TO PAGETOP