特集

国民的お祭りが行われる世界遺産の街

THE世界遺産ディレクター取材記

祭りを彩る人々と人形


―多くの観光客が集まってくるオリンダのカーニバルですが、実際に取材されていかがでしたか?

祭りを彩る人々と人形

江夏:カーニバルでは学校や職場、町内会などでグループを作り、さまざまなパレードを行います。今回の取材では、3種類のパレードに注目しました。1つは「フレヴォ」という踊り。小さな傘を持ってダイナミックなアクションで踊る様子は必見です。もう1つが、さとうきび労働者から生まれた、土着的な踊りの「マラカトゥ」。これは大きなカツラを被って太鼓を打ち鳴らしながら行進します。そして最後が「ボネコ」と呼ばれる巨大人形が練り歩くパレードです。

―巨大人形とはどういったものでしょうか?

江夏:人形の高さは4メートル近くもあり、登録された専門の担ぎ手が人形の上半身を肩の乗せて歩くようになっています。オリンダのカーニバルで人形がパレードするようになったのは、ヨーロッパの魔除け人形にヒントを得て、80年ほど前にあるアーティストが作り始めたのがきっかけです。その後、数が増えていき、今では100体以上がカーニバルの最終日に大行進します。人形のモチーフには、ニュースで話題になった人物や、大統領などの有名人の顔が使われます。これはたった1つの工房ですべてを制作しています。その中でも1人の職人がほとんどを手がけており、彼はこれまでに900体もの人形を作ったそうです。映像を見ていただければわかると思いますが、私たち日本人が「人形」と言われてイメージするような、かわいらしい感じではなく、人の表情をリアルに再現しています。中にはドギツイ印象のものもあり、非常にユニークです。

―人形がどんな顔をしているか、放送が楽しみです。バレンシアの火祭りで燃やされる人形ですが、こちらはどのようなものなのでしょうか?

柳沢:元々、バレンシアの火祭りでは、不要な木材に布や帽子をかぶせたものを「ファリャ」と呼び、燃やしていたのですが、時を経てそれが人形になっていきました。祭りの際は地域や学校などのコミュニティごとに人形を作るので、その数は400体にも及びます。人形は、専門の職人が制作していて、やはり政治家や市長などの風刺を込めたものや、スポーツ選手などその時の流行だったりといろいろなものがあって見ているだけで楽しいですね。