特集

国民的お祭りが行われる世界遺産の街

THE世界遺産ディレクター取材記

祭りの舞台となる世界遺産の街


―お祭りのことについて詳しく聞く前に、その舞台となるそれぞれの街と世界遺産についてお聞きしたいと思います。まずバレンシアの世界遺産はどういったものなのでしょうか?

祭りの舞台となる世界遺産の街

柳沢:バレンシアにあるのは、文化遺産で、絹の取引所(ラ・ロンハ・デ・ラ・セダ)という15世紀に造られた建築物です。バレンシアは、かつては絹の生産をはじめとする産業で大変栄えた街でした。その繁栄の象徴として商人たちが建てたのがこの絹取引所なのです。後期ゴシック様式を取り入れた、この建物で注目なのは、「柱のサロン」と呼ばれる大広間です。この広間には、ヤシの木をイメージしたと言われる、ねじれ模様の柱が何本もあり、目をひきます。これは、ヤシの木を“永遠の命”の象徴としていたイスラムの名残です。バレンシアは遠い昔はイスラム圏だったことが分かります。柱をよく見ると、50センチほどの石を積み重ねて作られており、当時の石工の技術が高かったことがうかがえます。

―放送では、柱のディテールもチェックしたいですね。もう一方のオリンダはどういう街なのでしょうか?

祭りの舞台となる世界遺産の街

江夏:オリンダは、ポルトガル人によって、ブラジルで最初に建設された植民都市です。暖かい気候が、さとうきびの生産に適しており、砂糖産業で発展しました。現在では、産業の拠点が隣街のレシフェに移ってしまい、都市としては小規模になりましたが、そのことが逆に植民地時代の街並みをそのまま残すことになりました。その旧市街全体が「オリンダ歴史地区」として1982年に文化遺産に登録されたのです。

―オリンダの街はどこが見所なのでしょうか?

江夏:ポルトガル様式の小さい家々が立ち並んでいるのですが、一軒一軒の壁がさまざまな色で塗られていて非常にカラフルな景色が広がっています。また、さとうきび産業で財を成した商人たちが教会を寄贈したので、教会が多いのもこの街の特徴です。こうした街並みや教会群を資源とした観光が現在のオリンダの主な産業になっています。そんなオリンダに最も人が集まるのが、2〜3月に行われるカーニバルのときなのです。