特集
Q:番組の構成はどのように組み立てるのでしょうか?
愛場:
個人差はあると思いますが、僕は基本的にロケ出発前にプロデューサーと一緒に「今回、この世界遺産は、こんな取材をして展開していこう」と打ち合わせをしますね。その後、実際にロケに行って取材しながら、面白い!と思ったことがあれば、突っ込んで深めていきます。もちろん帰国後の編集段階でも、構成を考えていきます。直感的に面白いと思ったことがあれば、それを生かした構成がたてられるよう心がけています。
尾賀:
私は、まずスタッフルームにある資料などを集めて、あとはネット書店で検索をしてみて関連資料を片っ端から入手します。本を読みながら興味深い内容に線を引き、時間があれば、その本を書いている方や監修をお願いする方に直接会いにいって話を聞きます。その後に軽い構成を立て、最後プロデューサーにプレゼンをして出発します。
小澤:
歴史に関することには、諸説があることが多いので、いろいろな本を読むと、それぞれに違うことが書いてあって迷ってしまうこともありますね(笑)。皆さん、監修をお願いできる人が見つからないときはありませんか?

先日「ラ・ショー=ド=フォンとル・ロックル、時計製造業の都市計画」を担当しましたが、大学などに時計学のようなものがないので、なかなかふさわしい方がいなくて困りましたね。日本古典時計協会という皆さんに辿り着いて、その協会の方にやっていただくことになりました。
石渡:
「シュトルーヴェの測地弧」も苦労しました。昔は天文学と数学は1つの学問だったのですが、両方をひとりで監修できる専門家の方がなかなか見つからなかったんです。結局、そのときはいろいろな人に相談して、国立天文台にも勤めていた、日本測量協会の先生にお願いをしました。
Q:番組の構成を組み立てていく上で苦労する点はどこですか?
愛場:
番組では、世界遺産に登録された理由を映像化していくことに苦労しています。その理由が、とても漠然としていたり、複雑で難しい内容であったりすることが多々あります。いろいろな世界遺産があり、すべてが見た目で分かりやすいものばかりとは限りませんから。教科書のような情報にならないように、テレビ番組として興味深く見られるようにするにはどうすればいいか、といつも考えています。
石渡:
30分の番組を"持たせる"ための映像づくりにはいつも苦心していますね。
Q:"持たせる"というのは、どういったことですか?
小澤:
10分ほどの番組でしたら、絵柄の変化が少なくても映像的には成立します。しかし30分となると、繰り返し同じ映像が出てくると単調になってしまいます。

難しく感じるのが、宗教的な文化遺産です。例えば「アクスム」だと、"失われたアーク"やオベリスクの話はわかりやすいし絵になります。しかしアクスムを語る上で触れざるを得ない実態のないアクスム王国の巨大さ、キリスト教信仰の重要さという話を、誰もが興味を持てるように紹介するのは難しかったですね。
石渡:
かといってもそうした背景を省いてしまうと、世界遺産の意味が伝わらなくなってしまうので、ちゃんと押さえないとなりません。
尾賀:
小澤さんが担当した「ルウェンゾリ山地国立公園」や「ケニア山国立公園」のときのように、源流や山頂などのゴールがあって、そこを目指す中で世界遺産が見えてくる、という番組構成はわかりやすくていいですね。
小澤:
最後はどうなるんだろう?という感覚で視聴者に見ていただけているのかもしれませんね。