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失われたアークとアクスム王国をめぐる謎

失われたアーク

今回取材されたアクスムには謎が多いということですが、いったいどのような世界遺産なのでしょうか?

尾賀:「アクスム」はエチオピアの北部にある都市で、街全体が世界遺産として登録されています。アフリカにはイスラム教国家が多いのですが、エチオピアはキリスト教(エチオピア正教)の信者が人口の半数を超える国です。アクスムには、かつてこの地を支配したアクスム王国の遺跡だけでなく、キリスト教にまつわる歴史的建造物も数多く残されています。

そのアクスムのどういったところが謎なのでしょうか?

失われたアーク

尾賀:アクスムのキリスト教建造物の中で最も有名なのが「シオンのマリア教会」なのですが、その礼拝堂には聖書に描かれている遺物、「アーク」があると言われています。

「アーク」というと、映画などで登場する、あの秘宝ですか?

尾賀:そうです。アークは、旧約聖書に登場する、モーセの十戒が刻まれた石盤を納めたとされる箱で、「契約の箱」や「聖櫃(せいひつ)」などとも呼ばれています。かつてアークは聖地エルサレムのソロモン王の宮殿にあったとされていますが、ある時を境に歴史からアークは姿を消しました。そのため、「失われたアーク」といったように言われるのです。

その「失われた」はずのアークがアクスムにあるのですか?

尾賀:諸説ありますが、13世紀に編纂されたエチオピアの歴史書「ケブラ・ナガスト」によると、シバの女王がエルサレムを訪れ、そこでソロモン王との子ども、メネリク1世をもうけたそうです。そのメネリク1世がエチオピアにアークを持ち去ったと歴史書に書かれています。そのアークが、現在はアクスムのシオンのマリア教会の礼拝堂で保管されているもの、ということです。

アークがどのようなものか、番組では実物に見ることはできるのでしょうか?

失われたアーク

尾賀:「アークの番人」と呼ばれる1人の修道士以外は礼拝堂に入ることが許されていないため、普段は見ることができません。しかし「ティムカット」という年に1度のお祭りの日にはアークが人々の前にその姿を現します。番組では、今年のティムカットでアークが担がれて登場する映像をお届けします。アークを一目見るために集まった1万人以上の人々が熱狂する様子をぜひご覧になってください。