特集

サウンドエンジニア土方裕雄さんの5.1ch サラウンド講座

インタビュー

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Q:今回の番組の中で3つお勧めの音を上げるとしたら?

土方:
まずは前半の主人公「ヌー」ですね。群れの中に撮影車が入って撮影したんですが、セレンゲティには約150万頭のヌーがいます。目の前の群れがいなくなっても、すぐにまた別の群れがやってきて車の周りがヌーだらけになるという光景は圧巻。果てしない平原の中で悠々としているヌーの群れの声をぜひ聴いていただきたいですね。
石渡:
あとヌーで言うと、撮影中に群れからはぐれた子供のヌーを見つけて、ほぼ1日どうなるのか見続けていたんですけど、まさかという展開でスタッフ一同驚きましたよね。その時の声も印象的だったなぁ…。
土方:
カメラマンの矢口さんなんてずっと追いかけているうちに愛着が湧いて「ヌー太郎」って名前まで付けていましたもんね。正直、私もヌー太郎のぬいぐるみでも作って売り出したいくらいですよ(笑)。
石渡:
野生の本能ってすごいですよね。
土方:
以前、番組プロデューサーに「自然環境音の録音テーマは何か?」と尋ねられて「生命力(生きる力)を表現したい」と答えたんですが、ヌー太郎はまさにその象徴ですね。

ヌー

石渡:
象の声も結構迫力あるんじゃないですか?
土方:
そうですね。今回は水飲み場に向かう途中の象の群れに遭遇したので、その時に声を録りました。象の声は低くて迫力があるので、録音の際にはLFEというトラック専用のマイクを使ってみたのですが、これがかなり良かったです。低音の収音力が優れているので、深みのある象の重低音を聞いていただけると思います。

石渡:
今回親子チーターも偶然撮れたけど、あそこまで小さなチーターの泣き声が録れたというのも貴重でした。チーターは比較的好奇心旺盛なんでしょうね。撮影していたら子チーターたちがこっちに来てくれて、かなりの近距離で撮影する事ができました。
土方:
そうですね。音も非常にきれいに録る事ができました。一応威嚇とか自己主張の声なんですけど、鳥の鳴き声みたいに聞こえる本当にかわいらしい声で、音だけ聞いたらたぶんチーターだってわからないかもしれませんね。

子チーター