特集

地球史を知る

愛場ディレクターインタビュー

Q:グランドキャニオンの概要を教えてください。

グランドキャニオンは、言わずと知れた世界的に有名な観光地でもあります。
誰しも一度は写真などで目にしたことがあるのではないでしょうか。
圧倒的なスケールの大峡谷の景色ですが、実はあの大峡谷をつくったのは、“川”、コロラド川なのです。時代をさかのぼること今から6500万年前、太平洋プレートと北米大陸が衝突し、その際に太平洋プレートが北米大陸の下に潜り込んで、上の地面を押しあげました。その時に地層が崩れず、そのままの形で持ち上げられたのがグランドキャニオンを含むコロラド高原でした。その後、長い年月をかけてコロラド川が地層を上から削り続け、600万年をかけて現在の形になったんです。激しい水の流れによって地層は削られ、一番深い所では、なんと20億年前の地層を削り続けているのです。そういう意味では、グランドキャニオンは、地球20億年分の記憶のつまった「地球博物館」みたいですね。

Q:「地球史スペシャル」を意識した部分とは?

地球史を知る

グランドキャニオン自体、どこをとっても地球史を語るにふさわしいサイト。ここがいかに広大かという事を表現するにはやはりヘリコプターで空から撮影するのが常套手段ですが、今回は、これまで一度もやったことのない大峡谷の底の撮影をメインテーマに据えました。コロラド川を船に乗って、上を見上げるような映像を撮ってみることにしたのですが、これがまた、日本では絶対に見られない面白い世界!(と言っても前後左右地層の壁に囲まれて他には何も見えなかったりするんですけど)。
取材では、コロラド川を400キロ、1週間かけて小型ボートで下りました。
途中で急流ポイントが何箇所もあり、水しぶきを浴びながら、船が大きく揺れながらの、ちょっとしたアドベンチャー気分を味わえました。毎日、野営キャンプでのテント生活が続き、少々スタッフのスタミナを消耗しましたけど…。それでも見所はたくさんありました。特に面白いと思ったのは「川が削りだした世界」、言い換えれば「川の力」。コロラド川が水の力で浸食することで地層や岩が不思議な景観になっているのです。まるで彫刻作品のように。例えば、5万人が一度に中に入ることができるという巨大な洞窟「レッドウォールキャバン」、流線型の模様が岩壁に描かれた「ディアクリーク」。どこか別の惑星に迷い込んだのではと錯覚してしまうような「アンテロープキャニオン」など、数多くのミステリーゾーンに遭遇しました。私の人生でもあんな不思議な光景は見た事がなかったので、撮影中もモニターを見ながらひそかに感動しておりました。
他にも化石を発見できたり、先住民が暮らしていた跡があったり、滝もありました。
動物も結構いて、鳥、トカゲ、カエルだけでなくビックホーンシープという立派な角を持った羊もいました。ここは川底から地上までかなりの高低差があるので、標高によって多様な動植物のゆりかごになっているという意味でも魅力的な場所ですね。
そして、今回一番のポイントは何と言っても“20億年前の地層”、つまりグランドキャニオンで一番古い地層部分です。行く前からどんな感じなのだろう?と興味がありました。
実際に現場で見ると水に濡れて光に反射し、怪しく光る黒い石でした。うまく言えませんが、美しいというか、不思議というか、他の地層とはちょっと貫禄の違う雰囲気を持ち、知らず知らず引きつけられる雰囲気がありました。 これらは到底、展望台からでは分らないので、そういう意味では今回のテーマである「地球史」というか地球の息吹を感じられる映像をお見せできるのではないかと思っていますのでご期待ください。