グッドジャッジ

vol.8：検事の仕事が知りたい！最強の捜査機関 「特捜部」 とは？

グッドワイフも気が付けばもう８話！物語の方も大きな展開を迎えましたね。果たして，壮一郎は自己の冤罪を明らかにし，無事に検事に復帰できるのでしょうか？

ということで…，今回は壮一郎が復帰を目指す 「検事 (検察官)」 という職業，そして，日本最強の捜査組織とも呼ばれる 「検察庁特別捜査部 (通称：特捜部)」 について，簡単に解説することにしましょう。

①検事 (検察官) ってどういう仕事？

弁護士・裁判官と並び法曹三者の一翼を担う検事ですが，弁護士・裁判官と同じく，司法試験に合格し，司法修習を経たのち，晴れて検察庁に登用されれば検事になることができます。検事の最も大事な仕事は，検察官として 「犯罪を犯したと疑われる人 (被疑者) を刑事裁判にかけ，有罪であると立証すること」。警察が捜査の上で発見した被疑者やその証拠を検察庁に回したら (これを 「送検／送致」 などといいます)，検察庁に所属する検事は，担当検察官として，改めて事件を法的な視点で精査し，有罪であると確信が得られれば，被疑者を刑事裁判にかける (＝起訴) ことができます。こうして被疑者を起訴する権限は，日本で唯一，検事たる検察官にのみ認められているんです。検察官を英語では 「prosecutor」＝「訴追する人」 というのですが，まさにこうした権限を独占して持っているからなんです。

ちなみに 「検事」 と 「検察官」 は同じような意味で使われていますが，実は少し意味合いが違います。「検事」 というのはいわゆる一般的な職業の名称・役職のこと。一方 「検察官」 というのは先ほど言ったとおり，職業ではなく，「起訴する人」(＝役割そのもの) のことを指します。そして法律では，「検察官という 『役割』 に就ける職業 (資格)」＝「検事だけ」 という構造になっているんです。つまり，両者は 「職業 (検事)」と，その 「役割 (検察官)」 という関係にあるわけですね。

②最強の捜査機関… 特捜部とは？

ニュースなどで一度は耳にする 「特捜部」 という組織。これは検察庁が抱える様々な部の一つで，正式名称を 「特別捜査部」 といいます。例えば，東京地方検察庁には，「刑事部」… 主に事件捜査を担当・指揮し，被疑者を起訴する段階まで進める部局，「公判部」… 起訴された事件を刑事部から引き継ぎ，主に刑事裁判のパートを担当する部局，「交通部」… 交通事故などの事件を専門的に扱う部局，などがありますが，その並びに 「特別捜査部」 があるんです。

ただ，特捜部は全国の地方検察庁にあるわけではなく，東京・名古屋・大阪だけに設置されています。なぜか？それは特捜部が扱う事件の特殊性によるものです。特捜部が扱う事件は大掛かりな脱税や政治家の汚職，その他背任や企業の横領・詐欺事件などの経済事件です。そのため，こうした事件が集中する大都市に設置されているんです。そのほか，特捜部の特徴として，扱う事件は極めて慎重かつ大規模な捜査が必要になるため，警察が初期段階の捜査を行う通常の事件とは違い，検察 (特捜部) が最初から最後まで一貫して捜査を行うことになっているんです。特捜部はこれまで，「巨悪を眠らせない」 というスローガンのもと，数々の大事件を担当してきました。まさに検察の力を象徴する組織といえるでしょう。そのため，ここに配属される検事は選ばれし精鋭だと言われ，特捜部長ともなると，時の政権からも恐れられる存在だと聞きます。そう考えてグッドワイフを見ると，やっぱり壮一郎はむちゃくちゃ優秀だったんだなということと (もちろん脇坂も？笑)，現役の特捜部長が賄賂やスキャンダルに巻き込まれ，捕まって起訴されるなんてことが，実はどれだけインパクトのある出来事だったのかがよく分かりますね。

さて，いよいよクライマックスに向けて，これから物語はますます大きく展開していきそうです。皆さんぜひぜひ，最後まで目を離さずにご覧ください！

弁護士：國松　崇

元 TBS 社員弁護士。現在は東京リベルテ法律事務所に所属し，主にエンターテインメント分野の取引法務や訴訟対応等を中心に，多くの企業・個人に対し，幅広くリーガルサービスを提供している。また，刑事弁護人としての活動も引き続き精力的に行っている。『 99.9－刑事専門弁護士－ シリーズ 』 など，多くの TBS ドラマにおいて，脚本作りや法廷シーンの演出など全体の監修を担当。