サンデーモーニング|TBSテレビ

「サンデーモーニング」毎週日曜日あさ8:00~9:54放送、出演:関口宏,橋谷能理子,岸井成格,張本勲,唐橋ユミ,水野真裕美,伊藤友里ほか

新春スペシャル「迷える世界」(1月8日放送)

ウォーラースティン教授 インタビュー(2)

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Q.アメリカの普遍的な価値観、自由・人権・民主主義は世界を引っ張ってきたが、トランプ氏の登場以来、その価値観が変わってきているように見えるか?

そうともいえるし、そうとも言えない。こう説明してあげよう。
アメリカは移民がつくった国だ。1492年以降、ヨーロッパの人達が、そして16世紀、いろんな所から移住してきた人々がアメリカを作ったわけだ。歴史上、何度も、アメリカでは先に住んでいた移民が、これから来ようとする移民を制限しようとすることが起こっている。今更始まった事ではない。アメリカにおける移民排斥の動きは昔から存在している。経済状態が良いと移民は歓迎される。なぜなら労働力として重宝されるからだ。そして景気が悪くなると、移民排斥運動が起こる。こんな歴史をアメリカは繰り返してきたわけで、何も新しいことではない。

移民に強く反対する人たちは、その昔、排斥の対象となっていた中国系の移民、アイルランド系の移民、東欧からの移民の子孫だったりする。アメリカ社会に溶け込んだ移民の子孫が移民反対の先ぽうに立っているわけだ。しかし、昨今の移民に対する反対運動は、確かにひどい。アメリカだけでなく、歴史的に移民に寛大だった国でも移民に対する風当たりが強くなっている。イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンまで移民に対して厳しくなっている。

日本は一度も移民に門戸を開いてこなかった国だ。だが、実際には日本自身が思っているより多くの移民を受け入れている。日本は日本に対して移民を受け入れていないイメージを持っているが、そうでもない。実は、結構、受け入れている。

アメリカのイメージは、常に移民に対して寛大なイメージを世界中が持っているが、良く見てみれば、そうでもない。一般的なイメージよりも受け入れてきた移民の数は少ない。確かに移民を受け入れてきた数は、国によって異なるが、人々が思っているほどの差はない。アメリカが移民に寛大な国であるという材料をみつけたければ、様々な資料があるが、その逆を示す資料もあるし、すぐに探すことができる。

Q.資本主義自体に問題が生じているということ?

ある意味、資本主義という制度はヒエラルキーに基づいた搾取的なものだ。金持ちはどんどん金持ちになり、貧乏な者は、ますます貧乏になっていく。そういう二極化の性質をもっている。

資本主義とは、そういう制度なのだ。今、資本主義は、制度として問題を抱えている。私はこれを「現代社会における構造的危機」と呼んでいる。資本主義は、底辺の貧しい人たちだけでなく、上位に君臨する富裕層にとっても機能しないものになっている。

トップの富裕層の人々にとっても現在の収入を維持することが難しくなっているからだ。我々が直面している構造的危機の中で、ただひとつ確かな事は、今まで40~50年、そして今後、20年くらいは続くと思われる今の制度は"存続しない"ということだ。

「構造的危機」の中で重要な問題は、いかに現行の制度を長続きさせるかということではなく、どのような制度が、現行の制度を引き継ぐのかということだ。私が考える次の制度は、資本主義ではないにしても、資本主義に似ていて、同じように問題があって階級的で搾取的。つまり、今と同じか、もっとひどい制度だ。もしくは、現行の制度よりも良いが、今まで我々が見た事もない制度。比較的、平等主義で民主主義な制度だ。世界は、今、この二つの代替案の中で、揺れ動き苦しんでいる。どうなるかは予見できない。なぜなら膨大な数の人間による、膨大な数の行動がもたらす結果だからだ。結果をもたらすのは、無数の人々による無数の行動、無数の瞬間の積み重ねだ。だから、だれも計算することはできない。

いろいろな集団が、こっちに引っ張ったり、あっちに引っ張ったり、押したりを繰り返しているが、ある瞬間、いずれかの方向に倒れ、新しいシステムが誕生するのだ。2040、2050年ごろには、我々は新しいシステムの中で生きているだろう。だが、それがどのようなシステムかは分からない。だが、その新しいシステムは、比較的安定していて、その後、数百年は続くだろう。具体的にどれくらいかは誰にも分からないが。

Q.今は先行きが見えず、何も予想できないのか?

二つの時間枠がある。短期循環は、せいぜい3年だ。そして中期循環がある。人々は短期循環の時間枠で生きている。今日食べなくてはいけない、今日寝なくてはいけない、今日寝る場所が必要だといって人々は短期循環的な時間枠の中で判断し生きている。これは貧しいひとでも大金持ちでも同じだ。

大金持ちだって短期循環の中で、どれだけ利益をあげられるかということを考えている。3年間で利益を回収できないことに投資などしない。なぜなら、中期的な時間枠では、どうなるか分からないからだ。それだけ短期循環は重要なのだ。

しかし短期循環は基本的な部分の変化をもたらさない。持たざる者たちにとっては、自分達の苦しみを最小化してくれる政策こそが「良い政策」となる。しかし、これでは、制度が改善されることはなく、苦しみが軽減されるだけなのだ。

もうひとつの時間枠は中期循環だ。我々が望んでいる制度の変化は、中期循環がもたらすものだ。だが、ほとんどの人は、想像することができない。だからといって、何も、その中で判断を下していないわけではない。(中期循環の中の短期循環において)押したり、押されたりしながら判断を下している。

最長で3年という短期循環と、10~30年という中期循環という2種類の時間枠があることを、きちんと整理すると、世の中で何が起こっているかが見えてくる。

短期循環の中で金持ちは自分たちの利益の最大化を追求し、貧しい人たちは苦しみの最小化を追求する。しかしどちらも、現行の制度に影響を与えることはできない。つまり、中期循環における資本主義に変わる次の制度には影響しない。


»ナイジェル・ファラージ氏のインタビュー

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