サンデーモーニング|TBSテレビ

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新春スペシャル「迷える世界」(1月8日放送)

ウォーラースティン教授 インタビュー(1)

トランプ大統領の「アメリカ」をどう見るのか?
世界の覇権をめぐる歴史の研究でその名を知られる社会学者・ウォーラースティン教授に話を聞きました。
(インタビュー:2016年12月17日アメリカ・イェール大学)

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Q.トランプ大統領が誕生したが、アメリカでいったい何が起こっているのか?

全ての人にとって驚きの結果だったと思う。おそらくトランプ氏本人にとっても驚きだったと思う。有権者の投票数ではクリントン氏がトランプ氏を大幅に上回っていたが、アメリカの選挙制度のもとでは選挙人の獲得数で結果が決まる。

多くの人が「なぜ、誰もトランプ氏の勝利を予見できなかったのか?」と言っている。これは、振り返って考えてみれば…という話だが、それだけ人々は現状に満足していないのだ。特に経済状況に不満を持っている。人々は、さまざまな要素に不満をもっていて、基本的には、その不満の矛先を自分たちとは違うサイドにいる人たちに対して向けている。「アメリカを再び偉大に」という言葉の裏には「我々の経済状況を、昔のように良くしてくれ」「子供や孫には、もっと状況をもっと良くしてくれ」という思いがある。

このような人々の思いが非常に強かったことが、トランプ氏の票を伸ばしたのだろう。もともとは3つの州の一部の有権者の思いが、きっかけだ。これが後々、大きな違いをもたらした。いずれにせよ、アメリカには「トランプ大統領」が誕生したわけで、彼は大統領としての権限を積極的に使っていくだろう。

トランプ氏が選ばれた今回の選挙を考察する上で、2つの見方がある。まずはアメリカ国内という観点からみると、トランプ政権は最近の記憶の中において「かなり右」だ。これまでトランプ氏が指名してきた閣僚をみても、あらゆる点からみて「かなり右」だ。

1つか2つの中間派を除いては、あらゆる分野において、最も右寄りの人物を選んでいる。彼はこの方針を、今後も出来る限り実行していくだろう。

そして2つ目の見方は「世界への影響」つまりアメリカの外交政策への影響だ。私の知る限り、トランプ氏は、自分自身の外交政策の方向性など考えたことなどないはずだ。外交に関してはしばしば方向性が矛盾する発言をしている。私の意見を言わせてもらえば、状況をコントロールする自分の能力を、過大評価している。交渉がうまければ、何だって自分の思う通りにできると思っているが、そんなことは全くの思い違いだ。

トランプ氏に限らず、外交において自分の思い通りに事を運ぶことができる人物など存在しない。アメリカの力は、過去30~40年の間に、大きく後退してしまっている。今も、どんどん衰退している。トランプ氏は、今後(外交面において)自分の思い通りにことが進まず、大きなフラストレーションを感じることだろう。
これからアメリカで何が起こるかは明白だ。しかし地政学的に何が起こるかは不透明だ。

Q.右傾化し保守化し、アメリカ優先主義になっている傾向があるのでは?

その通り。しかし、アメリカだけでなく世界的な傾向だ。経済状況が悪化する中で、人々は、どんどん保護主義的になっている。全体的な「パイ」(分母)が小さくなる中、自分の取り分が減ることを気にして、なんとか自分の取り分を確保しようして保護主義的になっている。口では「自分は保護主義的になっていない」と言っても保護主義的になっている。アメリカも日本もみんなそう。門戸を開いて自由貿易を実行する準備は、誰もできていない。なぜなら、その自由な競争の中で取り分を失ってしまうかもしれないと恐れているからだ。これは現実的な恐れだ。パイ(みんなで分け合うもの=分母)が小さくなった(自分の取り分を確保しないと…)と考えて、もがいているのだ。保護主義的になればなるほど、人々は強い政府を求める。自分たちの既存の取り分を守るための制度や法律を整備してもらおうとするのだ。

Q.富裕層やエリートもトランプ氏を支持しているようだ。なぜか?

トランプ氏が行おうとしている経済政策で恩恵を受けるのは金持ちだ。(富裕層が)トランプ氏を支持するのは、ごく自然なことだろう。富裕層の大部分がトランプ氏を支持している。
一部の富裕層は「これは愚行だ。(持たざる人たちの)大反発が待っているだけだ。(持たざる人たちと)折り合いをつけていかないと大変なことになる」と言っているが、そう言っているのは、富裕層の中の少数派だ。トランプ氏に対して、ほとんど影響力を持っていない。

トランプ氏は自分が思う通りに国内政策を実施し、結果、トランプ氏に票を入れた人たちの収入は減るだろう。まだ、そのことを(トランプ氏を支持した人達は)分かっていないが、時間の問題だ。1年か2年経てば、トランプを支持した人たちはガッカリするだろう。「トランプ氏は我々の生活を良くするといったのに、良くなったのは上位1%の金持ちだけだ」と言いだすだろう。だが今の時点では、(トランプ氏を支持した人達は)それが見えていないのだ。

これまでの政権は、いろいろな約束をしてきたにもかかわらず、結局、暮らし向きは悪くなってしまった。そんな中でトランプ氏を支持した人達は、トランプ氏が、世の中を揺り動かして一新してくれると思っている。しかし、これから失う物があることに気付いていない。過去や現状に不満を感じているから、今後少しは良くなったと思うかもしれない。だが、それは長続きしない。せいぜい1年か2年だろう。どこかの時点で人々は「おいおい!あんなに約束したはずなのに具体的な成果は何もないじゃないか」と言い出すだろう。

アメリカの国内状況は変わってくるが、国際的には変わらないだろう。国際社会におけるアメリカ大統領の力には限りがある。トランプ氏が思っているより、オバマ大統領、クリントン氏が思っているよりアメリカ大統領が出来る事なんて限られている。皆(アメリカ大統領の力を)過大評価している。

だからといって、愚かなことをしてもよい、ということにはならない。ここに、トランプ大統領に対する大いなる不安がある。彼はエゴが強いので一時な感情に押し流されて、とんでもないことをするかもしれない。あり得ない話ではない。だが、トランプ氏が中東において、アメリカに望ましい状況をもたらすような成果をあげられるかというと、彼には無理だろう。

Q.アメリカ大統領のリーダーシップも弱まっている?

その通り。かなり前から低下している。第二次世界大戦が終わってから25年間ほど、アメリカは世界で覇権的な力を有していた。これは明白で単純な話だ。アメリカがやりたいと思うことは95%実現することができたのだ。すごいことだ。

だが、様々な理由があって、アメリカの力、地位は失われていった。大体1970年くらいからだろう。徐々に力も地位も下がり、今となっては、アメリカが言う事に、何も言わず、何でも従う国は無くなってしまった。日本、中国、韓国、インドも、もちろんイランは論外だが、サウジ、トルコ、イスラエル、メキシコ、カナダ、フランス、ドイツだってそうだ。

アメリカが認めようが否定しようが、各国は自国の利益を追求する。そしてアメリカの行動に文句も言わずに追随することなどありえない。これが1960年代であれば、みなアメリカに追随していたわけだ。

2016年、2017年には、アメリカの後を何の前提もなく付いていく国などないのだ。つまり、アメリカは地政学的な力を、相当失ったということだ。だからといって他の国が地政学的な力を持っていると言う訳ではなく、誰もそんな力は持っていない。

どの国も、自国の利益を追求している。一時的な同盟を結んだり解消したりしながら、自国の利益を追求する上で最善の(同盟の)組み合わせを探っている。アメリカに最も忠実なイギリスやイスラエル、サウジでさえ歴史的にアメリカの後についてきた国々でさえ、そうではない。アメリカと交渉し、時に圧力をかけ、駆け引きをする用意ができている。これまでのようにアメリカが採用した政策をそのまま採用することはない。


»ナイジェル・ファラージ氏のインタビュー

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