
やってきた亜紀。
空を見上げる――満月。
川面に映って、ゆらゆら揺れている。
亜紀「……」
そのとき、同じく月を見にやってきた生方。
亜紀「(あ)……」
生方「(あ)……」
お互いに驚く二人。
生方「……どうしたんですか。こんな時間に」
亜紀「そ、そっちこそ。どうしたの?こんな時間に一人で」
生方「俺は……独身だから」
亜紀「(笑って)それ、関係ある?いいじゃない、既婚者が一人で月見てたって」
生方「……いいですけど。でもやっぱり、おかしくない?」
亜紀「……おかしくないよ」
生方「何かあったんでしょ?」
亜紀「(ギク)な、ないって。何にもない(と、笑う)」
生方「(ため息)……何でいつも無理するかな」
亜紀「無理?私が?」
生方「してるじゃん、いつも」
亜紀「!……」
生方「無理して、笑って。友達とゴタゴタになっても平気なフリして――」
亜紀「無理なんかしてない!」
と思わず声が上ずる亜紀。
亜紀「無理なんかしてなーい。だって幸せだもん」
生方「……幸せ?」
亜紀「幸せだよ?夫も優しいし、友達もいるし。子供たちも、ママのことが……」
と、言葉がつまる亜紀。
亜紀「ママのことが、だい、大好きって……」
その先が言えず、泣きそうになる亜紀。
生方「……」
亜紀、こみあげそうになり、立ち去ろうとする。
と――引き止める生方。
生方「俺は味方だから!」
亜紀「……え?」
生方「(はっとして慌てて)いや何ていうか、俺だって何かできることあるっていうか、もっと頼って欲しいっていうか……」
亜紀「?」
生方「とにかく……!」
と、生方、自らのショールをとり、亜紀にかぶせた。
亜紀「!……」
生方「とにかく亜紀さんの力になりたいんだよ」
亜紀「(見て)……」
生方「世界中の皆が敵になっても、俺は亜紀さんの味方だから」
亜紀「……」
見つめあう二人――。