東征伝絵巻 全5巻
重要文化財
鎌倉時代(13世紀)
紙本着色
鑑真和上は、文化爛熟する玄宗皇帝時代の唐において、受戒大師と呼ばれ僧俗の尊敬を一身に集めていたが、日本からの留学僧の懇請に応じて、仏法を広め仏教の基礎となる戒律を伝えるために、大海原を渡る志を立てる。「東征伝絵巻」はこの艱難辛苦の旅をつぶさに描いた伝記絵で、鎌倉時代後期に成立した。ストーリーはまことに劇的であり、奇瑞譚を交えて起伏に富んでいる。
巻末に銘文があって絵は画工蓮行(れんぎょう)の手になることが知られる。残念ながらこの絵巻のほかには画業が知られていないが、達者な描線からは蓮行の画工としての実力がわかる。見返しに施入銘と識語があって、永仁6年(1298)、鎌倉の極楽寺を開いた忍性(にんしょう)が発願し、唐招提寺に贈ったことがわかる。祖師鑑真和上の志に思いを馳せて絵巻の制作を思い立ったのであろう。
■
巻第一 詞絵各六段 (詞一段欠失)奥書あり
東山魁夷障壁画
国民的画家といわれた東山魁夷が、10年余りの歳月を費やし、鑑真和上に捧げるために描いた大作。日本の風土の象徴として、色鮮やかに描かれた「山雲」「濤声」と、和上の故郷中国の壮大な風景を墨一色で描いた「揚州薫風」をはじめとする水墨画が見事に対比しています。