おやこで学ぼう救急処置!!

お子様たちや、お母さん、お父さん…家族全員で「困った…こんなときどうしよう!」と、身近に起こりうる、ちょっとしたケガや病気の応急手当を『病院で念仏を唱えないでください』の医療監修チームに教えていただくコーナーです

【第5回】今さら聞けない!?
私たちができる救急処置のイロハ

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急病やけが、とっさにすべき救急処置の基本についてお話しします。

1胸骨圧迫はどのようなときに行うのでしょうか。また正しい方法を教えてください。

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胸骨圧迫は心肺停止の患者に行う蘇生処置の一つです。
心臓の疾患や不整脈などのために突然心臓が停止してしまう患者さんがいます。これを心停止と言います。
心停止になった場合、一刻も早くこの状況を発見(認知)してしかるべき処置を行わなければ命を助けることはできません。そのためまずは心停止を心停止だと認識することが重要です。

それでは、どのような時に心停止を認識したら良いでしょうか?
現在、世界的に普及している心肺蘇生法では以下の条件があるときが心肺蘇生を開始すべき状態とされています。
1. 意識がない
2. 正常な呼吸がない

実際には、突然倒れた人を発見したときは、周辺が危険でないことを確認して患者さんに接触し、「意識」があるかどうかを確認します。ここで意識がない場合には、周囲の人を集めます。そして119番に通報して人を集め、さらに「AEDを持ってきて下さい」と依頼をします

その後、息(呼吸)をしているかを見ます。胸が動いておらず、呼吸をしている様子がない場合は、呼吸なしと判断して直ちに胸骨圧迫、すなわち心臓マッサージを開始します。
ここで呼吸をしているかどうか判断できない場合は、呼吸がないと考えて胸骨圧迫をするほうが良いとされています。
胸骨圧迫は心停止からなるべく早く開始しないと患者さんの脳を蘇生することができなくなります。

胸骨圧迫は、胸の中央を素早く強く押します。両手を組んで胸の中心にあて、1分間に100~120回程度のテンポで約5cm程度胸がへこむように胸部を押します。
この際に肋骨が折れることがありますが、それよりもしっかりとした胸骨圧迫をすることで命を救うことが優先と考えるべきです。
胸をしっかりと押すことも重要ですが、押し続けることは効果的な胸骨圧迫を行うことになりません。押さえる前と同じくらい胸が戻るように圧迫の解除も重要です。

2人工呼吸はどのような時にするのでしょうか。また正しい方法を教えてください。

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心停止と判断して胸骨圧迫を行った場合は、30回の胸骨圧迫の後に、気道を確保して人工呼吸をします
頭部後屈顎先挙上法という方法で気道を確保して、呼吸を吹き込みます。1回の呼吸は1分程度で吹き込み、これを2回行います。人工呼吸を行ったら、すぐに胸骨圧迫を行います。これ以降は胸骨圧迫30回、人工呼吸2回を救急隊が到着するまで繰り返し行います。

人工呼吸は可能であれば実施するとよいですが、従来のマウスツーマウスは感染の観点から推奨されなくなってきています。
人工呼吸をすることで自分が感染するかもしれないと感じる場合は、人工呼吸はさけて胸骨圧迫をしっかりと行うことは許容されると思います。

3AEDはどのようなときに使うのでしょうか。正しい使用方法を教えてください。

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上記のように倒れた人の意識がない場合は、すぐに周りの人を呼び、119番通報と同時にAEDを持ってきてもらうように依頼します。
AEDは自動体外式除細動器の略で、装着すれば自動で心電図を解析して、電気ショックが必要かどうかを判断してくれる医療機器です。現在は、空港やコンサート会場など人の集まるところに多く配置されています。

AEDが到着したら、先ず電源を入れましょう。電源を入れるとAEDがしゃべり始めます。あとはAEDがしゃべったとおりに行動するだけでよいように作られています。
基本的にはAEDの指示に従うことが重要です
。この中で、「ショックが必要です」とアナウンスが流れれば、周囲の人に、「電気ショックをするので離れて下さい」と警告をして患者さんに誰も触っていないことを確認して、電気ショックのボタンを押してショックを実行します
ショックが終了したら、すぐに胸骨圧迫を開始します。
AEDは決して難しい機器ではありません。電源を入れてその指示に従えば誰でも使用することのできる救命機器です。

4救急車はどのような時に呼んでいいものなのでしょうか。救急車を呼ぶ判断を教えてください。

救急車は緊急度の高い病気や大きなけがの時に要請をします。「気道」、「呼吸」、「循環」、「意識」の4つの異常のいずれかがある場合は救急車を必ず呼ぶべき病態と言えます。
この中には、窒息、呼吸ができない(息ができない)、血圧が下がる、大出血をしている、意識が悪いなどが代表例です。

症状からは以下のような場合も救急車を呼ぶべき状態と考えて良いでしょう。
・顔の動きにくさとしびれ、ろれつが回らない、四肢麻痺がある、手足のしびれ(脳卒中疑い)
・激しい頭痛、意識障害(くも膜下出血疑い)
・突然の激しい胸の痛み、息切れ、呼吸困難(心疾患、肺疾患疑い)
・激しい背部の痛み(大動脈疾患疑い)
・激しい腹痛、血を吐く、便に血が混じる(腹部疾患疑い)

その他、大きな事故やけが、けいれんが止まらない、大やけど、激しい嘔吐、異物を飲んだなどの時にも救急車を呼んだ方が良いでしょう。
上記のような緊急性がある場合は、救急車をすぐに呼ぶべきですが、さほど重症ではないと思われる場合は、救急車を呼ばず自分で病院を受診することも検討する必要があります。
限られた救急車を必要とされる急病の人が利用できない様なことがないよう、みんなで救急車の適正利用に心がけるようにしましょう。
救急車の適正使用については、総務省のホームページなどを参照下さい。

写真:渡部 広明

【 医療監修 】

島根大学医学部附属病院 高度外傷センター
Acute Care Surgery講座 教授
高度外傷センター センター長
渡部 広明

専門分野:Acute Care Surgery(外傷外科、救急外科)、外傷学、災害医学、救急医学、病院前診療学、集中治療学

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