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TBSアンコール!特別展「世界遺産 ナスカ展ー地上絵ふたたび」

2008.2.5(TUE)-2.24(SUN)国立科学博物館

ナスカ展ツアー ―第一部「ナスカ - 砂漠のメッセージ」10〜13 ―

9.儀礼と音楽

ナスカ人は、自分たちの生命は自然界の精霊の力の作用を受けていると信じていました。その精霊を理解し、なだめる力を持つ者がシャーマンで、彼らは幻覚剤を用いて精霊を見ることが出来ると考えられていました。シャーマンは音楽、踊り、飲酒を伴い、作物の植え付けや収穫、死者や首級の埋葬の時に儀式が行われていました。
ここでは、シャーマンや楽師の土器や、太鼓、アンタラ、ラッパ、笛などの楽器を紹介します。

10.神々の世界

ナスカ文化の宗教は自然崇拝、魔術、シャーマンを中心とし、命あるものはすべて超自然的な力を与えられていると考えられていました。ナスカ人が「地上、天空、水中で最も強力なもの」とみなす生き物は、水と豊穣と生命に影響力を行使し、人間の運命を左右することが出来るとされ、特に重要な存在でした。美術では、そうした超自然的な力が「神話的存在」-強大な自然の精霊の属性を備えた存在-として描かれています。
特に強大な力を持つ動物として、地上では猫科動物(ピューマ、ジャガー、クーガー)、天空の怪鳥はコンドルと、鷹、そして海の支配者としてシャチが描かれています。
ここでは、神話的存在が描かれた土器や、手の込んだ刺繍が施されたパラカスの織物を紹介します。これらの織物は一般的にミイラを包むもので、今回、特に保存状態が良く美しいマントを8ヶ月の歳月をかけて修復ました。

ナスカ人は自分たちの神々の像を祀る神殿や神殿や礼拝堂を持ちませんでした。ナスカ川のそばに位置するカワチ遺跡は、多くの首長制社会から人々が巡礼に訪れて儀礼を行う、祭祀センターだったと考えられています。遺跡の周囲には無数の墓が取り囲み、多くの人がこの神聖な土地に埋葬してほしいと望んでいたことが分かります。 ナスカ文化の宗教は、死は生をもたらすという概念を包含するもので、斬首と儀礼としての首級の埋葬は宗教にとって不可欠と考えられていました。首級は新たな作物となって再生し、生命の糧をもたらす種子と同じものと捉えられていました。
ここでは、儀式に用いられた道具や装身具、シャーマンを模した土器などを紹介します。

11.戦争と首級

ナスカ文化の土器にはさまざまな武器を持った戦士の戦闘場面や、敵の首を刎ねる場面が多く描かれていますが、その目的については、議論が分かれています。戦闘で手に入れた敵の首級は儀礼目的で使い、額に穴をあけて運搬用のロープを通し、上下の唇をトゲで刺し貫いて口が開かないようにとめていました。また、土器の中には首級の口から作物が芽生えている絵もあり、死と再生の循環が示されています。
戦士の絵は、ナスカ後期には複雑化し、描かれる頻度も増えました。これはその頃に、彼らの文化の中で闘争の持つ意味が大きくなったことを意味すると思われます。
ここでは、戦士や戦闘の場面、儀礼の様子が描かれた珍しい壺、槍や黒曜石のナイフなどの武器と、首級を紹介します。

12.誕生と再生

ナスカ美術では、生命と豊穣と再生が、隅々に染み渡り、また同時代に北部海岸で栄えたモチェ文化では、多様な性行動が描かれているにも拘わらず、ナスカ文化の土器にはエロティックな題材は少ない。
また、ナスカ文化の器には女性の出産を描いたものも少なく、子供はめったに描かれていません。これが何を意味するのかはまだ解明されていません。
ここでは、数少ないエロティックな土器と妊娠や出産が描かれ珍しい土器を紹介します。

「パラカスのマント」の写真

『パラカスの墓地から出土したマント』
ペルー文化庁・ペルー国立考古学人類学歴史学博物館所蔵

「ナスカの首級」の写真

『ナスカの首級』
ペルー文化庁・ペルー国立考古学人類学歴史学博物館所蔵


写真撮影:義井豊


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