作品紹介

第4章 ミケランジェロと人体

多岐にわたるミケランジェロ芸術の根幹を成すのは、一貫して人体表現であったと言って良いでしょう。
彼は常に自身を彫刻家と見做しており、絵画においても力強い彫刻的な表現が顕著です。
本章では最初期の大理石彫刻《階段の聖母》と最晩年の木彫《キリスト磔刑》を軸に、ミケランジェロの人体表現の本質にせまります。

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『階段の聖母』 ミケランジェロ・ブオナローティ

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『階段の聖母』 ミケランジェロ・ブオナローティ

制作年
1490年頃
材質
大理石

ミケランジェロの最初期の作品の一つで、15歳のころ制作された若き天才による傑作。
ルネサンス彫刻の創始者ドナテッロが得意とした浅浮彫(スティアッチャート)技法が用いられています。
マリアの全身を極めて立体的に彫出し、力強い存在感を与えている点に、ミケランジェロの彫刻の特質が既にはっきりと現れています。

『クレオパトラ』 ミケランジェロ・ブオナローティ

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『クレオパトラ』 ミケランジェロ・ブオナローティ ※東京会場特別出品作品

制作年
1535年頃
材質
黒石墨/紙

ミケランジェロの素描の中でも名作の誉れ高い一枚。
ルネサンス期のフィレンツェで流行した理想的女性像の系統に属する作品。
複雑に結い上げ飾りを付けた髪型は、ボッ ティチェッリらによる先例にも見られる、そのジャンルに典型的な特徴です。
本作は独立した完成作であり、親しい青年貴族のために制作された贈呈用素描と考えられます。

『キリストの磔刑』 ミケランジェロ・ブオナローティ

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『キリストの磔刑』 ミケランジェロ・ブオナローティ

制作年
1563年頃
材質

ミケランジェロの死の直前に制作されたと考えられる小型の木彫作品。
甥レオナルドに 贈るために制作されたとも、より大きな木彫像の準備作として作られたとも考えられます。
未完成であるかのように、人体を一つのマッス(量塊)として表す手法は、《ロンダニーニのピエタ》などにも見られる、晩年の人体像の特徴です。

© Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti