特集

バーレーン、マナーマ第42回世界遺産委員会リポート

7月3日(火) バーレーン世界遺産委員会リポート 第六回

 新しい世界遺産の審議も終わり、最終的に今回の世界遺産委員会で19(自然遺産3、複合遺産3、文化遺産13)の世界遺産が新たに登録されました。これで世界遺産の総数は1092となります。
 委員会のテーマも、このあとは事務的なものになるので、会議場を出てバーレーンの街に出ました。こちらでは40℃以上の猛暑が続いていて、最も暑くなる正午から午後4時までは屋外での労働が禁止になってしまいました。外を長時間歩くのは危ないので、自動車での移動です。

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暑くて日中は人影もないマナーマ市内

 向かったのはキング・ファハド・コーズウェイ。海の上をわたる巨大な橋で、島であるバーレーンと大陸のサウジアラビアを結ぶ高速自動車道です。これを使うとバーレーンからサウジアラビアの首都リヤドまで、車で4時間!東京−大阪とほとんど同じです。「世界遺産」のような番組に携わっていると、サウジアラビアは宗教や政治の問題で撮影のハードルが高く、「遠い国」という印象です。ところがバーレーンに来て見ると、お互いに車で簡単に行き来しているというのです。特に週末になると比較的、戒律の緩やかなバーレーンに多くのサウジアラビア人がやってくるとのこと。「遠い国」を肉眼で見てみたい・・・というのが、ここへ向かった動機です。

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海上を延々とつづく橋

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水深が浅いためエメラルド色に見える海

 バーレーンの首都マナーマ中心部から車で30分ほど。エメラルド色の海の上を延々と橋が続きます。長さは25キロ。1986年に作られ、当時のサウジアラビアのファハド国王の名前が付けられました。やがて見えてきたのが橋の真ん中にある人工島で、塔のように見えるのは展望台です。ここがバーレーンとサウジアラビアの国境にもなっています。バーレーンとサウジアラビアの人はパスポートも必要なく、身分証明書だけで行き来できるのですが、私達はここまで。橋のさらに先、遠景でサウジアラビアの都市が見えました。

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国境でもある人工島。塔は展望台

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人工島からさらに橋はつづく

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遠くに見えるサウジアラビアのビルの影

 バーレーンにはふたつ世界遺産があります。
 ひとつは「真珠採り、島の経済の証」。バーレーンは古代から天然真珠の一大産地で、真珠長者の家などが世界遺産になっています。日本の養殖真珠に負けて、いまや真珠採りは行われていませんが、それでも20〜30年くらい前までは真珠の取引所がマナーマにあったそうです。

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2012年に登録された
「真珠採り、島の経済の証」

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真珠商人がつくった建築物

 もうひとつが「バーレーン要塞−ディムルンの古代の港と首都」。かつてバーレーン周辺を支配下とした「ディムルン」という国があり、その遺跡で古い部分は紀元前2300年にまで遡ります。ディムルンはメソポタミア文明とインダス文明、つまり現在のイラクを中心とする中東とインドをつなぐ交易地として栄えたといわれています。確かにバーレーンからアラビア湾を北上すればすぐイラク、南下して東に向かえばすぐインドです。

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2005年に登録された「バーレーン要塞」

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海岸沿いに広がる遺跡群

 今でもバーレーンは出稼ぎでやってくるインド人労働者が多く、地理的な近さを感じさせます。またイスラム教においてもイラクに多いシーア派が、バーレーンでも7割以上を占めます。ただし王族をはじめとする支配層はスンニ派で、少数派でありながらスンニ派がいろいろと優遇されており、シーア派との摩擦が絶えません。

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マナーマ市内のスンニ派のモスク

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同じ市内のシーア派のモスク

 世界遺産は、現代につづくその国の歴史的背景を知る良い手がかりだと、改めて感じました。
 来年の世界遺産委員会はアゼルバイジャンのバクーで開かれます。どんな新しい世界遺産が出てくるか、楽しみです。

プロデューサー 堤