M 特集『ゼメリング鉄道』│TBSテレビ:THE世界遺産

特集

白い岸壁に映える美しい石造りの橋

11月30日の放送は、オーストリアのゼメリング鉄道です。19世紀半ば、アルプスを越える山岳鉄道として作られたこの鉄道は、今も現役で活躍している文化遺産です。世界で初めて世界遺産に登録された鉄道として、鉄道ファンにとっても垂涎の的! そんなゼメリング鉄道の取材について、ヨーロッパから戻った小澤ディレクターに話を聞きました。

ゼメリング鉄道
峠を越えるため、ゼメリング鉄道はアルプスの山間を蛇行しながら徐々に登っていきます。

─ゼメリング鉄道は、いつごろ、どのような目的で作られたものなのですか?

小澤ディレクター(以下、小澤):1848年に着工されたもので、開通したのは6年後の1854年です。ウィーンから、イタリアのトリエステを結ぶ路線の途中にある、グログニッツとミュルツツーシュラーク間の約41kmがゼメリング鉄道と呼ばれています。オーストリア帝国時代、港町トリエステからの物資を運ぶために建造されました。この鉄道が開通するまでは、馬車でしか峠を越えることができなかったのです。

─ゼメリング鉄道の特徴を教えてください。

小澤:蒸気機関車でアルプスを越えるなど誰も想像しなかった時代に、世界で初めてアルプス山脈を越えた鉄道です。建設当時にはすでに鉄橋を造る技術があったのですが、アルプスの美しい景観を守るため、あえて石造りの橋を採用しています。また、現在も重要な路線として利用されていることも、大きな特徴です。

ゼメリング鉄道

世界遺産に登録された数少ない鉄道のひとつ、ゼメリング鉄道は、現在も現役の路線として利用されています。

ゼメリング鉄道

ゼメリング鉄道の誕生は、列車に乗って旅するという旅行のスタイルを作り上げました。ビジネスクラスはゆったりとした席でくつろげます。

─地図で見ると、線路が蛇行していますね。

小澤:レールがクネクネと曲がっていて、急な斜面を徐々に登っていく方法を採っています。開通した当初、ゼメリング鉄道を走る機関車は車軸に仕掛けがあり、車輪が左右にずれるようになっていました。急なカーブがあるので、通常の機関車の車輪では曲がることが難しく、小回りが利くように開発されたものだったのです。