特集
マヤでもない、アステカでもない知られざる文明の神秘「古代都市エルタヒン」
―街で行なわれている観光客向けのアトラクションが、実は儀式のひとつだった、というのは面白いですね。

愛場:そうですね。パパントラのボラドーレスと違い、山村の人々は農耕の儀式としてボラドーレスを行なっているので、普段は観光客にも見せていません。今回は特別に取材することができました。ほかにも番組では「ウアウアスの儀式」というものを取り上げています。これは十字の形をした木に4人の男が宙づりになり、“人間風車”のように自力で木を回転させる儀式です。言葉で上手く説明しにくいですが、見れば間違いなく驚きます。
―“人間風車”とは、とても奇妙な儀式ですが、いったいどんな意味が込められているのでしょうか?
愛場:回転する行為には「すべてが絶えず動き続ける」という意味があり、広義には「自分たち民族の絶え間ない繁栄を願う」という意味がこめられています。また、この儀式は1人につき13回、木の周りを回るのですが、この13という数字は彼らにとって“生と死”がミックスされた特別な象徴だそうです。生と死が繰り返される輪廻のような意味が込められている、と現地の考古学者は考えています。ちなみに、彼らがボラドーレスを行なう際に使う木の高さも13m。13という数字はエルタヒンを知る重要な鍵の1つなのです。
―今の残る遺跡や儀式のいたるところに当時の人々の信仰が表現されているのですね。では最後に、視聴者の方へのメッセージをお願いします。
愛場:エルタヒンは、マヤ、アステカと比べると、まだあまり知られていない世界遺産でしたが、調べてみるとそこには驚くほどの神秘的な文明が隠されていました。“神に生贄として人を捧げる”という現代人から見ると野蛮にも思える儀式を行っていた人々が、実は、豊穣を願い続ける、農耕民族だった。そんな意外性を、番組をご覧になって感じてもらえればと思います。
世界遺産の歩き方
エルタヒンがあるベラクレス地方は、バニラの発祥地。日本ではアイスやケーキでお馴染みのバニラだが、地元のお店では食材用以外にさまざまな土産物として売られている。中でも女性に人気なのはバニラの香りがするアクセサリー。オシャレのワンポイントとして身につければ、甘い香りが体を包む。