特集

マヤでもない、アステカでもない知られざる文明の神秘「古代都市エルタヒン」

太陽神に豊穣を願う人々が残した遺跡や不思議なアトラクション

―豊穣祈願の儀式とはどのようなものだったのでしょうか?

愛場:エルタヒンで行なわれていた儀式には面白いものがいくつかあって、その中のひとつが球技です。これは手や足を使わずに、肩、胸、腰だけで球を打ち返すというルールで行なわれていたようです。この球技には残酷な決まりごとがあり、ゲームの勝者が生贄として首を切られてしまうんです。普通に考えたら敗者が生贄にされそうなものですよね。しかし当時は生贄になることは名誉であると考えられており、球技の勝者を太陽の神に捧げたと現地の考古学者は考えているようです。

―勝者が生贄になるというのは驚きですね。エルタヒンで球技が行なわれていたということはどうしてわかったのですか?

太陽神に豊穣を願う人々が残した遺跡や不思議なアトラクション

愛場:エルタヒンには、現在のサッカーグランドよりも細長い球技場が17カ所も見つかっています。その球技場の壁に競技の様子が描かれているんです。1000年以上前の壁画ですが保存状態がよく、球技の様子や、競技者同士が会話をしている様子が描かれています。その中には生贄となって首にナイフを突きつけられている壁画まであるんですよ。

―エルタヒンだけでそれだけ多くの球技場が見つかっているということは、マヤ文明やアステカ文明でも儀式で球技を行なう習慣はあったのでしょうか?

愛場:マヤやそれ以前の時代にも球技の儀式が行なわれていた地域はあったようですが、17カ所も球技場が密集して見つかっているのはエルタヒンだけです。そのため、ここは古代球技場の発祥地、中心地とも言われているんです。今回の放送では、トトナカの人々の末裔に協力してもらい、古代の球技を再現してもらいました。ユニークな球戯を、ぜひご覧になって頂きたい。

―それは貴重な映像ですね。トトナカ人の末裔の人たちは、現在はどんな暮らしをしているのでしょうか?

愛場:現在も伝統的な文化や習慣を残しつつ暮らしています。「パパントラ」という街に「ボラドーレス」という観光者向けのアトラクションがあるのですが、これも実はトトナカ人がやっていた豊穣祈願の儀式が元となっています。高さ30mもの柱の先から男たちがロープに縛られ、空中を旋回しながら降りてくるという儀式です。彼らは鳥の人と呼ばれています。今回、番組では山村で行われる伝統的なボラドーレスを取材しました。日本のテレビでは、あまり見ることができない珍しい映像です。