特集

カムチャツカ火山群I, II

火山が育む命のサイクルTHE世界遺産ディレクター取材記

―20mとはかなり接近していますね。カムチャツカのヒグマはどれくらいの大きさなのですか?

火山が育む命のサイクルTHE世界遺産ディレクター取材記

小澤:体長は2mから、大きいものだと3mにもなります。体重はオスが500kg、メスは一回り小さくて300kgくらいです。クリル湖では母グマと2、3頭の子グマの親子を撮影したのですが、ベニザケを狩ってムシャムシャ食べる姿は、間近で見ると迫力がありました。ほかにも、子グマが母グマにくっついてちょろちょろと動いたり、じゃれたりしている様子はかわいいので必見です。

―熊の子育ては見てみたいですね。放送が楽しみです。ほかにどのような見所がありますか?

小澤:1週目は、大規模な噴火の瞬間です。音が聞こえないほど遠い場所だったのですが、巨大な煙が吹き上がり、その煙が後ろから太陽に照らされる光景は、現在も活動している火山の力強さが伝わってくると思います。2週目は、火山の麓で暮らす動物たちの特集です。顔を水につけて泳ぐようにベニザケを狙う、ヒグマのハンティングの様子を、数十mまで接近して鮮明に撮影することができました。迫力のある映像がいっぱいなので、お楽しみください。

―最後に視聴者の方へメッセージをお願いします。

火山が育む命のサイクルTHE世界遺産ディレクター取材記

小澤:取材で感じたのは、火山が自然を育んでいるということです。噴火によって火山灰が川や海に落ちて、そこから溶け出したミネラルがプランクトンの栄養になります。それをサケが食べて、さらにクマが食べる。クマが食べ残したり、力つきたサケの死骸が土壌や水の栄養分になるという命の循環が、カムチャツカの豊かな自然を生み出しているのです。また、火山灰だけでなく、火山の地熱も魚の住みやすさにつながっています。クリル湖の岸辺には水温が30度以上の場所があるのですが、そこは地熱で温められたお湯が噴き出しています。そのおかげで、クリル湖は北海道よりも北に位置するにもかかわらず冬でも凍りません。こうした、火山の存在によるカムチャツカの自然のサイクルを感じてもらえればと思います。

世界遺産の歩き方

サケの宝庫であるカムチャツカでは、その調理方法が発達している。「ペリメニ」という水餃子のような料理では、牛肉や豚肉のほかに、サケのひき肉を具材にする。また日本ではご飯のおかずや酒の肴であるイクラは、塩漬けにしたものを、サワークリームがたっぷりぬられたパンに乗せる食べ方が定番だ。市場ではイクラを量り売りで販売しており、サケの種類によって大きさや味わいが微妙に違う。